活発化する合従連衡。トヨタ、日産、ホンダ各陣営の戦略とは
電動化時代を迎えた自動車業界で活発化したのが、合従連衡の動きだ。日本の自動車メーカーではトヨタ自動車、日産自動車、ホンダの3社を軸とした陣営が形成された。仏グループPSAと欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が統合するなど海外でも同様の動きが起きた。各陣営は部品の共有化などを進め、開発コストなどの低減を狙う。
トヨタ 少額出資を推進
トヨタは少額出資を伴う「緩やかな提携」で、国内自動車メーカーと電気自動車(EV)開発の布陣を整えてきた。2017年に資本提携したマツダとは、デンソーも加えEVの基本技術を開発する共同出資会社「EV C.A.スピリット」(EVCAS)を設立。SUBARU(スバル)やスズキなど計9社が参画した。
EVCASは「当初の目的を達成した」として20年に解散したが、スバルには追加出資して持ち分法適用会社化して関係を深め、EV専用車台「e―TNGA」を共同開発。22年半ばまでに中型スポーツ多目的車(SUV)「bZ4X」を発売する予定だ。またスズキとも19年に資本提携し、ダイハツ工業と共に小型EVを共同開発している。いすゞ自動車とも資本提携し、日野自動車も加えた共同出資会社で商用車の電動化にも取り組む。
一方、ローカル色が強く求められる中国では比亜迪(BYD)とEVで提携。地域ごとの最適戦略を練る。
日産 部品7割共通化
日産、仏ルノー、三菱自動車の3社連合は、モーターや電池などEVの基幹部品の約7割で規格を統一し、量産効果の最大化を追求する。プラットフォーム(車台)では日産が中型車、ルノーが小型車向けをそれぞれ開発する。
日産が今冬に発売する新型EV「アリア」で採用する車台「CMF―EV」は、ルノーが22年にも投入予定の新型EVでの搭載を計画する。連合では25年までに同車台を70万台で採用する予定としている。
日産と三菱自は軽自動車サイズのEVを共同開発し22年度に投入する計画。
3連合では品質や量産効果を高めた電動車を相次ぎ投入する一方、EV用電池の再利用など車のライフサイクル全体で競争力発揮を目指す。
ホンダ GMの電池採用
ホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)と17年に、燃料電池(FC)システムを手がける合弁会社を設立した。その後、バッテリーモジュール開発などに提携を拡大した。24年にGMのバッテリー「アルティウム」を用いた共同開発のEVを発売する予定。「北米での電動化は、GMとのアライアンスを柱の一つとし、効率的に進める」(三部敏宏ホンダ社長)としている。
いすゞとは、FCをパワートレイン(駆動系)に用いた大型トラックの共同研究を進めている。22年度中に、公道での実証実験を始める方針だ。
海外勢 パワートレーン共同開発で提携
海外メーカーをめぐっては独BMWと英ジャガー・ランドローバーが、19年に電動パワートレーンの共同開発で提携した。独フォルクスワーゲン(VW)と米フォードは2020年に包括提携を結び、EV関連では、VWがEV専用プラットフォーム「MEB」をフォードに提供する。欧州ステランティスは、21年1月にグループPSAとFCAが統合して発足した。
協業活発化 開発を効率化、“規模の利”追求
自動車メーカーの協業が国内外で活発化しているのは、電動化で多額の費用が必要となるからだ。電動化や自動運転など先進技術を搭載した車両1台の開発費は、「今までの倍」とも言われる。EVは電池を中心に投資が大きく「一つの会社ではやりきれない」(元トヨタ幹部)。
また電動車をめぐっては、新興メーカーや異業種の存在感も増している。自動車各社は連合を形成して規模を拡大し、投資効率向上や開発スピードアップを狙う。電池など重要部品の調達安定性を高める狙いもある。
一方、元トヨタ幹部は「単純に販売台数(が増える)だけではなく、部品やパワートレーン単位で(共通化などの)連携が起きなくては仲間づくりの意味がない」と釘を刺す。量と質の両面で提携戦略の巧拙が問われる。