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MLCCと全固体電池に注力する村田製作所、中島社長が描く成長戦略

電子部品最大手の村田製作所の勢いが止まらない。コロナ禍にもかかわらず2021年3月期は過去最高の業績。日本の電子部品メーカーとして初めて営業利益3000億円超えを達成した。第5世代通信(5G)や自動車の電動化などを追い風に世界首位の積層セラミックコンデンサー(MLCC)は引き続き好調。さらに電池事業を新たな柱と位置付け力を入れる。社長の中島規巨氏に今後の成長戦略などを聞いた。(京都・大原佑美子)

―今期は1600億円の設備投資を計画しています。ここ数年と比べ少なめですが。

「建屋への投資が一巡したためで、生産設備向けの投資額が900億円程度を占める。MLCCへの投資が中心だが、電池も非常に逼迫(ひっぱく)した状態にあり、積極的に能力増強を図る。電動工具などパワー系の電池を使うツールの需要を取り込みたい。今期はまだ電池事業の黒字化は難しい。投資を優先させたい」

―開発中の全固体電池の進捗(しんちょく)は。

「複数社の産業機械向けに採用され、年内に月10万個体制で量産し供給を始める。産機の中で70―80度Cになる高温環境下での特殊用途で実績を作り、ウエアラブル機器向けリチウムイオンバッテリーの置き換えを狙う」

―MLCC市場が引き続き伸びています。

「少なくとも今後3年は市場全体の成長率が10%強で推移すると想定し、当社もそれに応じた増強を続ける。特に最先端品では、他社にまねされないよう技術開発にはしっかり投資する。海外の同業に対しては常に3―4年はリードしたい」

―半導体では供給不足が起きています。MLCCに関して不安要素はありますか。

「多くの顧客で、部品の適正在庫水準が大幅に引き上げられている。その反動が下期にあると見ている。市中在庫が潤沢になると、ある程度の値下がりが進むだろう」

―コロナ禍から急速に回復している中国市場をどう見ますか。

「ファーウェイ(華為技術)に対する米国の輸出禁止措置を受け、中国ローカルメーカーがシェア拡大に動いている。ただ私自身は、それがオーバーアクションとなり中国のスマートフォン市場もダウントレンドに入ってしまうのではと懸念している。(旺盛な需要が継続するという)市場コンセンサスとは少し乖離(かいり)がある」

日刊工業新聞2021年7月5日

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