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ブリヂストン「稼ぐ力の再構築」へ10%規模目指す新指標

拠点再編など構造改革進める

価格競争や新興企業の台頭でタイヤ事業を取り巻く経営環境が厳しさを増す中、ブリヂストンは“稼ぐ力の再構築”に乗り出した。「戦略的な意思決定を支援する仕組みが不可欠」(石橋秀一グローバル最高経営責任者〈CEO〉)と、経営指標にROIC(投下資本利益率)を導入し、2023年12月期には10%規模を目指す(20年12月期は5・5%)。高付加価値製品・サービスの拡大とともに、大規模な拠点再編や費用改善などの構造改革に着手し、筋肉質な体質に生まれ変わろうとしている。

グローバルで事業を推進し資産を拡大してきた一方で、収益性は新型コロナウイルス感染拡大前から悪化。調整後営業利益率は5年連続で低下し、20年12月期には前期比2・4ポイント減の7・4%にまで落ち込んでいた。

同社は投じた資金に対しどれだけ効率的に利益を生み出せたかを測る指標のROICを導入し、23年12月期までの3年間の中期経営計画に盛り込んだ。21年12月期に6・3%、23年12月期は10%に高める。競合各社も投下資本の効率を重視し、仏ミシュランはROCE(使用資本利益率)を23―30年に10・5%以上を保つと設定。横浜ゴムは23年12月期にROIC7%を目標としており、ブリヂストンとしても成長を続けていくためには計画達成が求められる。

収益性の回復に向けて、投資先の選定や既存事業のテコ入れをする際は加重平均資本コスト(WACC)5・5%を目安とする。既存事業では欧州などのタイヤ事業と、タイヤ製品以外の多角化事業がこの基準に届いていない。両事業ではすでに工場閉鎖や事業売却などで計21拠点の再編が実行済みだ。

今後さらに見直しを進めていく方針で、案件によって地域性や将来性との兼ね合いはあるが「リターンを追うことでビジネスの質を上げ、強い事業だけが生き残る」(菱沼直樹グローバル最高財務責任者〈CFO〉)体制の確立を急ぐ。

また、カギを握るROIC目標達成のため部門ごとに経理人材から“アンバサダー”を選び、各職場に適した重要業績評価指標(KPI)設定や改善活動を財務部門が支援している。従業員がバランスシートを意識し、在庫の見直しが進むなど成果が出ている。従業員の意識も高めつつ目標達成のための基盤を固めている。

日刊工業新聞2021年6月17日

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