デンソーが次世代事業の柱に据える「空飛ぶクルマ用部品」の中身。

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プロペラの根元部分に、モーターとインバーターを一体化したEPUが搭載される

デンソーが、次世代事業の柱と位置付ける空飛ぶクルマ用部品の開発を加速している。モーターとインバーターを一体化したプロペラ駆動用部品で、モーターは自動車用と比べて出力密度を3倍高める技術にめどをつけた。重量を3分の1にでき、実用化に重要な軽量化で前進した格好だ。カギはハイブリッド車(HV)などで培った電動化技術。自動車での強みを、新規事業の育成につなげる。(名古屋・政年佐貴恵)

次世代事業の柱に

デンソーが開発しているのは、電動垂直離着陸型航空機(eVTOL)用の電動推進ユニット(EPU)で、2019年から機体を手がける米ハネウェル・インターナショナルと共同開発を開始。5月には同社とEPUの開発・設計や生産、販売などで共同事業を行うことで提携した。22年の試験飛行を目指している。

EPUの実用化に向けた最大の課題が軽量化だ。eVTOLの場合、機体重量に占めるEPUの割合は自動車の約6倍。航行距離を伸ばすための電池搭載量や、可搬重量を増やすのにも軽量化は不可欠だ。またプロペラの回転で発生する熱の冷却性能や、信頼性も欠かせない。

そこでモーター表面に磁石を貼り付ける構造にすることで磁石の使用量を増やし、磁石の配置を工夫するなどして出力の向上を図る。

また車では水冷式が一般的な冷却方法を、熱交換器などの周辺部品が不要な空冷式に変更して軽量化。飛行時に得られる風をシミュレーション解析して冷却設計に活用するほか、モーターにファンを搭載して冷却性能を高める。

インバーターでは、高効率で電力損失が少なく耐久性も高い炭化ケイ素(SiC)半導体を採用し、ウエハーからパワーモジュールまでを内製。半導体モジュールは従来の片面から両面で冷却できる構造にして空冷化に対応する。これらの部品を構成する素材も、高強度かつ軽量のものを積極的に採用する方針だ。

デンソーは車の電動化で技術を培い、高いシェアを抱えるモーターやインバーターが強みだ。軽量化や性能向上の上で課題となる熱の発生量を抑え、かつ効率的に熱を逃がす技術には一日の長があり、同社の担当者は「モーターの体積や重量に直結するため、競争力の源泉だ」と力を込める。

同社は車の技術を空飛ぶクルマに生かすだけでなく、その開発で得られた知見を再び電動車向けに還元する方針だ。車だけでなくあらゆるモビリティーの電動化を視野に、eVTOLの実用化に向けEPUの性能向上を進める。

日刊工業新聞2021年7月21日

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