M&Aの可能性も。KDDIがDX人財50%増へ
KDDIは、新規事業創出や法人顧客の業務改革を担う「デジタル変革(DX)人財」を2023年度までに現行比約50%増の3000人にする目標を示した。社内研修や中途採用などで増員につなげる。M&A(合併・買収)によって達成が前倒しされる可能性もある。携帯通信業界では通信料金引き下げが進み、収益源多様化の重要性が増している。KDDIは法人事業拡充に向けて、顧客のDXを総合的に支援できる体制の強化を急ぐ。
DX人財の内訳は、短期間で試作と改良を繰り返すアジャイル開発などの技術を担当する「DXテクノロジスト」や、顧客体験の設計を担う「DXエクスペリエンスアーキテクト」など。法人顧客のDX推進や、新たな事業モデルの構築に貢献できる能力を持つ人をDX人財とみなしている。例えばDXエクスペリエンスアーキテクトは、ユーザーインターフェース(情報の入力・表示形式)の設計や改善などを行う。
増員は社内研修「DX人財育成プログラム」や、中途採用の強化といった施策を通じて実現を目指す。DX人財の認定基準の詳細は開示していないが、研修受講状況や専門知識、業務履歴などを総合的に判断する。M&Aを前提とした目標設定は行っていないため、実施されれば3000人到達の時期が前倒しされる可能性が高まる。森敬一取締役執行役員専務は、22年度中の達成について「努力したい」と語った。
インタビュー/取締役執行役員専務・森敬一氏 通信以外の付加価値提供
法人事業を統括する森敬一取締役執行役員専務に環境認識や今後の戦略などを聞いた。(編集委員・斎藤弘和)
―個人向け通信の値下げが進んでいます。法人事業の位置付けはどう変わりますか。
「法人向けの通信料金は、数年前に今の個人向けのようなことが起きている。スマートフォン(の時代)になり、各通信事業者が同じ端末を提供する中、顧客は料金次第でどこから買っても良くなった。通信以外の付加価値を提供する必要がある。顧客の本業に貢献するビジネス系のITに5―6年前から注力し、成長し始めた。そこへ個人向けの料金引き下げが来て、ますます法人事業の重要性が大きくなっている」
―法人事業で重視する取り組みや指標は。
「基本的には人財(の育成)だ。顧客のビジネスを理解して提案していく意識変革をした上で、コンサルティングやプロジェクト管理などの技能を入れていく。DXは“総合格闘技”だ。通信だけでなくセンサーを含めた機器の知識が必要だし、データ分析やクラウドの使い方も知っていなければならない。1人で全てをやれるわけではなく、知見を持つ人を組み合わせる」
―DX人財3000人の達成を前倒しするためのカギは。
「社内の育成だけでなく、中途採用。まだ能力が足りず、もっとスケールアップしたいところはM&Aで新会社をつくる可能性もある。22―24年度の次期中期経営計画を進めていく上で(DX人財が)必要になる」