凸版印刷が進める仮想テレポーテーションとは?遠隔から買い物をリアルに体験
リアルと仮想店舗つなぐ
凸版印刷は、研究を進めている「IoA(能力のインターネット)仮想テレポーテーション技術」や仮想現実(VR)を活用した遠隔体験の実証実験を次々と展開している。中でも買い物の遠隔体験は、新型コロナウイルス感染拡大で外出・移動に制限がある状況で活躍に期待がかかる。身体的な理由や地理的制約など、コロナ禍以外にも自由に買い物を楽しめない人は少なくない。よりリアルな体験を遠隔で楽しめる仕組みは喜ばれそうだ。
IoA仮想テレポーテーション技術の活用は、コロナ禍以前から凸版が力を入れてきたテーマだ。遠隔地からロボットや端末などを操作して人間の能力の拡張を図る仕組みは、働き方改革や地方創生などさまざまな課題解決につながる。電子商取引(EC)が一気に浸透した購買体験も対象の一つだ。
凸版は、IoA仮想テレポーテーション技術を使った買い物サービス「IoAショッピング」を開発。実店舗にあるアバター(分身)ロボットの遠隔操作と、スマートフォンから接続できるバーチャル店舗でのアバター操作を自由に切り替えでき、ウインドーショッピングのような実店舗でなければ難しい体験を再現可能にした。
3月にはベータ・ジャパン(東京都千代田区)と共同で実証実験を実施。ベータ・ジャパンの都内の店舗と、バーチャル空間に店舗を再現した「バーチャルb8ta」をリンクしてサービスを提供した。
バーチャル店舗内では気になる製品の3次元(3D)モデルを見るだけでなく、実店舗にいる店員から説明を受けたり、アバターロボットのカメラを通して現物を確認したりできる。実店舗の人工知能(AI)カメラを通じて、店内にいる人やロボットの位置情報もバーチャル店舗に反映することで、二つの店舗の連続性を高めている。
凸版は一方で、別の方法を用いたリアルな買い物体験の実現にも取り組んでいる。福島県南相馬市で始めた実証実験では、VRグラスにスーパーマーケットの映像をリアルタイムに配信。ジェスチャー操作を使い、店頭で実物を選ぶように商品を購入できる。
利用を意識しているのは、過疎化が進む地域に住む高齢者など“買い物弱者”の存在。遠隔での購買体験を必要とする人はデジタル端末の操作に慣れた人ばかりではない。ユニバーサルな仕組みも作りながら普及を図っている。(国広伽奈子)