バーチャル遠足やドローン遊泳、5Gで身近になる「IoA仮想テレポーテーション」
凸版印刷は、臨場感あふれる遠隔体験を提供する「IoA(能力のインターネット)仮想テレポーテーション」技術の研究や開発を東京大学大学院情報学環の暦本純一教授と共同で進めている。自宅にいながら観光や校外学習を行うなど、さまざまな遠隔体験の没入感や現実性を高める際に第5世代通信(5G)が活躍する。
「立ち入り制限のある福島県双葉町を空中遊泳」―。2019年11月、いわき市内に移転している双葉町立双葉南・北小学校の体育館で行われた「バーチャルふるさと遠足」。体育館に設置した200インチのスクリーンに現在の故郷や震災復興現場の様子、現地で働く人々の姿が次々と映し出された。
ロボットやウエアラブル端末、4Kカメラなどの遠隔操作を通じて遠隔地にいるような体験を提供するIoA
仮想テレポーテーション技術を用いた「IoA学園」の一環。大容量の4K映像でも複数の大型ディスプレーに遅延なく送ることができる5Gの活用を見据えた取り組みだ。時間的・身体的制限が少ない遠隔校外学習は好評で、学校関係者からの引き合いが多いという。
凸版印刷ソーシャルイノベーション事業部の荻野孝士氏は、没入感を高めるためにも「情報量が多いほど良い」と話す。高速大容量通信、低遅延、同時多数接続が可能な5Gにかける期待は大きい。
ネットワークを介して人の能力や意識を拡張できるIoAについて、暦本教授は「IoT(モノのインターネット)の次世代版」と表現する。例えば飛行ロボット(ドローン)に乗り移った感覚で景色を楽しんだり、分身ロボットを使って外出が難しい人でも遠隔地の人に会えたりといった用途を想定する。
凸版はバーチャル校外学習以外にも、百貨店の外商の遠隔化や遠隔観光などさまざまな実証実験で活用先を拡大させる方針だ。
IoA活用の主目的は社会課題の解決。通信環境の整備や空間共有など新技術の開発が進めば、働き方改革や防災、地方創生など、あらゆる課題を解消する遠隔体験ソリューションの創出につながる。(国広伽奈子)