凸版印刷がバーチャルラボ開設。顔や肌などデータの個別化で新サービス
凸版印刷は、人体の情報を用いた研究や用途開発を担う「トッパンバーチャルヒューマンラボ」を23日に立ち上げる。高精度な計測機器の導入や情報加工エンジンの開発などを進めて企業の新事業創出を支援する。2023年度をめどに、ラボで計測したデータを企業が事業開発に活用できる「人体情報プラットフォーム」のサービス開始を目指す。
人体情報プラットフォームを通して顔や肌などの人体情報を分析・活用してもらい、顧客ごとにパーソナライズ(最適化)したサービスを提供する際の基盤として顧客企業が活用できるようにする。まずは企業の事業創出支援に主眼を置き、計測環境の拡充や情報加工エンジンなどの開発に力を入れる。
このほど、顔の形と肌の質感を高精度に捉える大型の撮影装置「ライトステージ」を本店(東京都台東区)に導入した。計測データは化粧やアパレルをはじめ幅広い業界での活用を見込む。
ライトステージは発光ダイオード(LED)と偏光板を備えた346個の光源と、18台の一眼レフカメラで構成する直径約2・7メートルの撮影装置。光のパターンを変えながら連続撮影して肌の光学的特性を捉える。凸版によると、国内企業の導入は2例目。映画・ゲーム業界以外では珍しいという。投資額は非公開。
同社は同装置を活用して、撮影と高精細な3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)への加工サービスを提供する予定。情報活用のためのエンジンも開発する。
ライトステージの活用に向けて、コーセーと実証実験を進めている。計測データから作成した3DCGで化粧層の光学シミュレーションを実施。コーセーのファンデーションに含まれる顔料の発色特性を忠実に再現できることを確認した。
化粧は肌質によって見え方が異なる。新型コロナウイルス感染拡大で店頭販売やテスターの利用機会が減る中、化粧の見え方を高精度に再現するシミュレーターが化粧品選びに役立つと見込んでいる。
同社は今後、顔以外にも計測可能な対象を広げて基盤を支える人体情報のデータベースの拡大を図る。基盤は情報銀行のような仕組みを想定しており、幅広い情報を登録・活用できる環境を整えておくことで、今後生活者向けに機能を提供する際に少ない計測・登録作業でさまざまなサービスを享受できる利点を訴求しやすくなる。