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スリッパ産業の集積地・山形県谷地、累計3万足のオリジナル商品を展開する中小企業

スリッパ産業の集積地・山形県谷地、累計3万足のオリジナル商品を展開する中小企業

サイズとカラーバリエーションが豊富な「バブーシュ・帆布」

山形県河北町の谷地地域はスリッパ産業の集積地として知られている。阿部産業(山形県河北町、阿部弘俊社長)は、一般的なスリッパづくりにとどまらず、オリジナルデザインの製品にも力を入れている。コロナ禍で家にいる時間が増え、新たに巣ごもり需要も出ている。阿部社長にモノづくりの取り組みなどを聞いた。(編集委員・大矢修一)

サイズとカラーバリエーションが豊富な「バブーシュ・帆布」
―斬新(ざんしん)なデザインのオリジナルスリッパに力を入れています。

「当社は1919年(大8)創業で、これまで真摯(しんし)にモノづくりを行ってきた。約15年前から独自デザインを取り入れたオリジナルのスリッパを手がけ始めた。自社のデザイナーを中心に、外部との連携にも取り組むなどデザインを重視している。既存のスリッパは海外製品との価格競争も厳しく、付加価値の高い新製品が必要でもあった。オリジナル製品は2年ほど前にファクトリーブランド『ABE HOME SHOES』として打ち出している」

―特に人気のあるオリジナル製品を教えて下さい。

「2018年から発売しているハンドメードによる製品『バブーシュ・帆布』だ。これまで累計で3万足を販売した。国内はじめインターネットを通じて米国や韓国、スペイン、イスラエルなどからも注文が舞い込むようになっている。同製品は今年1月に限って3日間で数カ月分の受注があった。コロナ禍で家にいる時間が増え、カラフルなスリッパに履き替えて生活するような需要が生まれているのかもしれない」

―スリッパの販売状況はいかがですか。

「コロナ禍の影響で20年4月の単月売り上げは半減した。ただ、その後に持ち直し、21年3月期は前期(20年3月期)を上回る見通しだ。オリジナル製品が寄与している」

―今後の課題は。

「オリジナル製品はハンドメード品でもあり、先を見据えたモノづくり人材の育成が課題でもある。そこで将来は工場にスリッパづくりを体験できるスペースを整備したい。モノづくりに興味がある若手を呼び込む仕掛けを地域とともに考えてモノづくりを通じて、これまで以上に地域の活性化につなげていきたいと考えている」

ポイント/地元に残れる場、若者に提供

1月にオンラインショップを本格的に立ち上げた。独自デザインによるスリッパはコロナ禍でも消費者の心をつかんでいるようだ。人気の「バブーシュ・帆布」は7色で、それぞれ5サイズを用意。サイズとカラーバリエーションが豊富な点も人気の理由だ。社員数は約25人。30―40代が中心で若返りが進んできた。阿部社長は「若い人が地元に残れる場をつくっていきたい」と話す。今後も真摯なモノづくりを実践していく。

日刊工業新聞2021年3月18日

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