コロナ禍で家庭用ミシンが好調、200万円の超高級機も登場!
新型コロナウイルス感染症の影響はマイナス面だけではない。これまで下降傾向だった産業に再び明かりをともした例もある。家庭用ミシンはその一つ。外出自粛などの「巣ごもり需要」を取り込み、好調の波に乗る。主要メーカーの業績も堅調に推移する。一方で工業用ミシンはコロナ禍によるアパレル業界の停滞が直撃し低迷気味。ただ、非アパレル需要の開拓や「縫い」の技術進化に向けた研究開発など、反転に向け打開策を探る。
ブラザー工業の2020年4―12月期における家庭用ミシンの売上高は前年同期比で5割以上増え、直近10年では最高額になった。21年1月には消費税抜きの価格が200万円と従来比約3倍の超高級機を投入。同社は家庭用ミシンを含む事業について、21年7月ごろまでは強い需要が続くと予想。強気の姿勢がうかがえる。
蛇の目ミシン工業も同様で、ミシンを主体とする家庭用機器事業の20年4―12月期の売上高が同37・1%増と拡大した。定価10万円以上のコンピューターミシンの販売台数が例年より大幅に増加。7月以降、タイと台湾の生産拠点で家庭用ミシンを増産している。
新型コロナのマスク不足に伴う手作りマスクの浸透と、家で過ごす時間が増えたことがミシン需要につながったことは明らかだ。ただ、好調の理由はそれだけではない。
家庭用ミシンとひと口に言っても、シンプルな機能が特徴の「エントリーモデル」と、本格的な洋裁が可能な「高機能ミシン」に分かれる。当初はマスク作りをきっかけにエントリーモデルの需要が高まったが、現在は高機能ミシンが見直されている。蛇の目では20万円前後のコンピューターミシンや、60万円以上の刺しゅう機能を備えた高機能ミシンが売れている。
単にマスク不足のため押し入れからミシンを取り出しただけではない。ミシンを使うことで消費者がモノづくりの楽しさを再認識・再評価している。これが一過性ではない家庭用ミシンの好調さにつながっている。
縫製用の工業ミシンでは世界トップのシェアを持つJUKIも、家庭用ミシンに期待を示す。同社も高機能の家庭用ミシンを手がけており、内梨晋介社長は「好調は当面続くだろう」と期待。「ミシンでモノを作る喜びや楽しみが広がれば(家庭用の)好調は維持する」と前を向く。
各社は、会員制交流サイト(SNS)「インスタグラム」などでミシンの使い方を写真や動画で紹介。消費者と企業がつながる取り組みを進め、さらなる需要を喚起する。