JAXAの観測衛星にも採用された霧ケ峰のセンサー。三菱電機はどう生かす?
温暖化が影響
空調機器事業は欧米市場から文字通りの追い風が吹く。「気候変動による気温上昇が関係し、欧米でルームエアコンの需要が大きく伸びている。今までイメージのなかった欧州でも必需品だ」と事業担当専務の松本匡は思わぬ援軍を得る。コロナ禍の巣ごもり需要も後押しする。
欧米は従来セントラル(中央式)空調が主流であり、欧州のうち南欧などは空気が乾燥しておりエアコン要らずだった。それが地球温暖化の影響で生活環境が変化した。
室内機と室外機を分けた直接膨張(直膨)式エアコンは発祥の日本とアジア中心に普及していたが、松本は「30年近くかけて欧州などでも個別分散の省エネルギー性や快適性を切り口にこつこつと耕してきた」と成果を喜ぶ。
米国は依然としてセントラル空調が幅を利かせているが、1月に発足したバイデン政権は前政権と比べて気候変動対策に熱心だ。欧州に続いて米国からの追い風が強まりそう。
2018年に設立した、セントラル空調大手のトレイン・テクノロジーズとのルームエアコン販売などの米国合弁会社も順調だ。「販売チャンネルをうまくミックスしてウィンウィンの関係を築けており、空調事業の成長に非常に寄与している」と松本は満足げだ。
1970年に発売した換気扇「ロスナイ」も需要旺盛だ。国内の業務用で7割のシェアを持つが、松本は「今回のパンデミックで世界的に換気への意識が高まっている」と肌で感じる。室内の暖かさや涼しさを外に逃がさない全熱交換式で省エネにつながるため、脱炭素化の潮流とも合致する。
見守りにも
世界最長寿ブランドとしてギネス認定を受けたルームエアコン「霧ヶ峰」は三菱電機のビジネスモデル変革の主軸を担う。19年から搭載する赤外線センサーは宇宙航空研究開発機構(JAXA)の観測衛星「だいち2号」にも採用された“超一級品”だ。
松本は「霧ヶ峰のセンサーは高画素で室内の人や動物をすごく見ている。エアコンは部屋全体を見渡せる位置にあり、老人やペットの見守りなどに使える」と期待する。カメラの画像センサーと違ってプライバシーの問題が本来なく、新たなサービスの事業化もそう遠くないはず。
製品ラインアップは住宅と業務用を問わず、空調・換気や給湯、照明など幅広い。もちろん冷蔵庫や調理家電も健在だ。数少なくなった総合電機メーカーの強みがそこにある。松本は「暮らしの環境づくりのトップブランドになりたい」と次の100年へ夢を語る。(敬称略)