成功例も着実に増加、ブラザー工業が進める「AI活用プロジェクト」

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現在のAI研修はオンライン(研修を担当する渡辺氏)

奮闘!AI社内プロ

ブラザー工業が、全社のさまざまな業務の効率化に向け「AI(人工知能)活用プロジェクト」を進めている。社員自身がプログラミングを含めてAIを使いこなすスキルを身につけ、職場の課題を自ら解決する体制を目指す。最近は、社員の関心が高まり、社内の専用ホームページには日に600件のアクセスがある。10件以上の実用化の成功例も出てきた。(名古屋編集委員・村国哲也)

プロジェクトは、会社の至る所でのAI活用を意味する「AIエブリウェア」を掲げて2018年4月に始まった。推進役は開発センターのソフト開発技術部で当初の担当者は4人。AIに何ができるかをまず知ってもらうため、専用HPで基本や関連ニュースを紹介し、研修も企画した。「ゼロスタートで仲間づくりに苦労した」と須崎与一プロジェクト・マネージャーAI活用(PM)は苦笑する。

社員が講師

現在は10人体制。管理職・新入社員の各基礎研修、具体的な課題解決のための任意参加のプログラミング研修を開く。毎月のプログラミング研修は募集開始1時間で満席となる人気ぶりで20年度は100人以上が受講した。「販売企画や事務部門を含め、AI活用の相談が毎月ある」(須崎PM)という。

研修運営の中心は入社3年目の渡辺航平氏だ。大学院修士課程でAIを専攻したが、AI活用プロジェクトのことは知らずに入社した。研修内容を考え、入社2年目の4月から講師も務め、海外の最新の論文をかみ砕いて社内に紹介する。須崎PMは「AIは社内になかった新技術。入社年次は関係ない」と信頼を寄せる。

現場が提案

職場での成果も出始めた。工業製品では安全な使用を促すラベルの貼付が義務だが、製品や仕向け先の違いで表示内容や貼る場所は数百通りある。プリンター工場のある特定ラインでは「AIを使ってみたい」と現場が提案し、貼付後のラベル検査を目視からAIに切り替えた。「こちらは支援のみで3カ月で導入。貼り忘れや貼り間違いがゼロになった」と須崎PMは驚く。プリンターのインク吐出素子の穴形状検査へのAI活用も現場主導だ。抜き取りによる電子顕微鏡での撮像判定をAIに切り替え、目視検査工数は8割減。不良判定精度も90%強から5ポイント向上した。

指導者育成

「成功事例が身近にあると普及が進む」と小久保雅俊ソフト技術開発部長は期待する。将来は全社員5000人の3%に当たる150人を、職場で指導ができる「AI人材」にする考えだ。佐々木一郎社長が唱えるのは「社員一人ひとりが機敏に変化に対応する会社」。AIをその重要ツールの一つとし現場主導での浸透を図る。

日刊工業新聞2021年3月12日

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ブラザー工業 AI

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