海外に遅れ取る3Dプリンター活用、現状打破へ近畿でプロジェクトが動き出す
近畿経済産業局は3Dプリンターの実用化が海外より遅れている現状を打破しようと企業への導入支援に乗り出している。2019年に立ち上げた「Kansai―3D実用化プロジェクト」は地域の垣根を越え、全国から約400社が参画。20年8月開始の導入検証事業へは38社が参画した。事業を主導する地域経済部次世代産業・情報政策課の谷川淑子課長補佐に取り組みの成果を聞いた。(大阪・大川藍)
―導入検証事業の狙いを教えて下さい。
「設計や造形、評価関連企業に加え、素材メーカーにも協力いただき、3D関連ツールを一度に試せる事業を行った。検証したからといってすぐ導入できるわけではないが、選択肢の一つとして3Dプリンターの活用に取り組むことは重要だ。コロナ禍でモノづくりの変革が迫られる中、海外はデジタルへかじを切っている。導入検証事業を通じ、新しいモノづくりについて社内で真剣に話すきっかけになったのではないか」
―どのような成果がありましたか。
「選定部品の軽量化を実現した企業のほか、強度確認や実用化の検証に取り組んだ企業があった。『3Dプリンターを意外と使えた』『従来工法の方がよかった』などリアルな体験ができ、一歩踏み出す重要性を体感いただけた。参画した38社のうち、9社が成果発表できるまでになった」
―今後の方針は。
「来年度からはKansai―3D実用化プロジェクト事務局の立花エレテックを主体とした民間主導の取り組みにする。20年度にトライアルできなかった企業も有料にはなるが導入検証へ挑戦してもらいたい」
―ほかに注力したい分野はありますか。
「人材育成にも力を注ぐ。3DプリンターやCADを使える学生は就職の幅が広がることに気づかず、フィギュア産業など特定分野に流れる傾向がある。デザインコンテストなどを通じ、実力ある人材の産業界とのマッチングに取り組みたい」
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