1000店で宅配サービス、セブン社長「顧客とのニーズ競争にどこまで付いていけるかだ」
新型コロナウイルス感染拡大は、コンビニエンスストア業界トップのセブン―イレブン・ジャパンの売り上げにも大きく影響した。既存店売上高は3月に前年同月比で3・2%減となって以降、プラスとマイナスを繰り返している。2020年を振り返りつつ、21年の展望を永松文彦社長に聞いた。
―今年の感想は。「新型コロナ対応を経営の中心に据えてやってきた。加盟店オーナーや店舗スタッフらが安心、安全、健康で働けるようマスク配布やビニールカーテン設置に取り組んだ。1店10万円の加盟店特別感謝金、従業員へのクオカード配布、売り上げ減少率に応じた加盟店支援金支給など、最大限の支援をしてきた」
―店舗の状況はどう変わりましたか。「巣ごもり需要によって粉物やパスタ、酒などが売れた。客数は減ったが、まとめ買いにより客単価は上がり、店の使われ方が変化した。1店舗でのまとめ買い需要に対応するため、店内レイアウトを変更した」 ―「ミニスーパー化」しているように見えます。
「スーパーと我々ではコンセプトが違う。ディスカウントに走ることは考えておらず、リーズナブルで、味と品質にこだわった品ぞろえをする。地域のお客さまのニーズにどこまで対応できるかが、一番重要だ」
―足元では都心部の店舗は厳しい状況が続いています。「都心部でも周辺に住んでいる人たちはいて、パンや総菜などを購入し始めた。行楽地の店も商圏の広い住宅立地店に変化してきており、これまで来店したことがなかった層の利用が増えている」
―商品を店舗から宅配するネットコンビニも拡大しています。「30分から1時間で届ける実験を300店で行っている。21年夏には1000店に増やす。その後全国に展開する計画で、店舗から手元まで届ける『ラストワンマイル』のサービスは拡充する」
―宅配で加盟店の負担が増えるのでは。「今、その店で注文対応が可能かどうかは、即時に画面上に表示される。コンビニをさらに便利にする挑戦は、加盟店オーナーたちも評価してくれている。今後も存続、成長するためには変化に対応していくことが一番で、これがフランチャイジーの加盟満足度を高めることになる」
変化対応力は、小売業界でも群を抜いている。「創業の頃から他社との競争とは考えていない。我々は、お客さまのニーズとの競争。どこまで付いていけるかだ」(永松社長)と言い切れるのも自信があるが故。コロナ禍が収束を見せない中、変化対応力をテコに攻めの姿勢をより鮮明にしている。(編集委員・丸山美和)