スーパー躍進、コンビニ苦戦。コロナ禍で明暗
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で消費動向が目まぐるしく変わり、小売業の業績は明暗が分かれ、商品の見直しやデジタル化などスピード対応を求められる1年だった。これまで伸び悩んでいたスーパーマーケットは躍進し、好調だったコンビニエンスストアは苦戦を強いられた。
外出自粛やテレワーク、休校により家でご飯を食べる機会が増え巣ごもり需要が生まれた。野菜や肉、酒などの食料品、日用雑貨を買いためるため、スーパーに多くの人が来店し客単価も上昇した。
日本チェーンストア協会によると、1月から9月までの総販売額(会員企業56社、既存店)は前年同期比0・4%増。小さい数字に見えるが、食料品が販売不振の衣料品などを補っての数字で、いかに食料品の販売が好調だったかが分かる。
売れ筋商品の変化も著しかった。ちょっと立ち寄って買う利用者が多かったコンビニでは、主力のおにぎりやソフトドリンクの販売が激減。セブン―イレブンでは「今までの商品では通用しない」(高橋広隆取締役商品部長)と、即座に食品メーカーと商品戦略の見直しに着手した。
着目した一つに、外食店の休業で納入が滞っていた高級食材があり、秋田県の比内地鶏を使った親子丼は飛ぶように売れた。競合するコンビニからも余った地域食材を使った新商品投入が相次いだ。各店で野菜の販売が増えたのも、購買行動変化を受けての策だ。
新型コロナは、あらゆる店で電子決済が可能になるなどデジタル化を加速させた。レジに並ばず支払いができる、イオンリテールの「レジゴー」は運用店舗数を拡大。ファミリーマートやローソンも無人決済店の実証実験を行い、人に代わって商品を陳列する遠隔操作ロボットの試験も始めた。
もともと消費動向の変化に敏感な小売業界だが、ウィズコロナの中では、さらにスピードアップした対応ができなければ、淘汰(とうた)されかねない段階に入った。