雪道での自動運転はできるの? 除雪車での実証実験が年末からスタート
除雪機、自動走行へ前進
北海道では積雪寒冷地を生かした自動運転技術の開発に取り組む動きがある。北海道大学の江丸貴紀准教授は札幌市と自動運転技術を活用した歩道用の除雪機の実証実験を行う。歩道用除雪機を高機能化することで誘導員を省人化し、人件費の削減などにつなげる。今冬にも実際の歩道での実証を始める考えで、江丸准教授は「3年後をめどに正確に動くモデル機を作りたい」と力を込める。
今年3月に札幌市の除雪機を置く車両基地に試験走行用のコースを設置した。巻き上げた雪がつかないようにしたり、除雪の邪魔にならないようにしたりするため、センサーの位置をどう工夫するかなどを検証した。今夏はアルゴリズムなどを解析してきた。2020年末頃から冬季で始まる除雪作業に合わせて実証走行していく考え。
課題は歩行者をいかに検知して安全を確保できるかだ。江丸准教授は「センサーの目の前に雪があり、その先に万が一、人がいる時に検知できるかが重要」と指摘する。解決策として熱を検知するサーモカメラがあれば歩行者の存在を把握できるとみる。高性能センサー「LiDAR(ライダー)」と組み合わせて距離感をつかむなど「どの状況でどれを使うのが最も良いのか」(江丸准教授)を確認しながら、安全性や精度を高めていく。
除雪作業は除雪機を運転するオペレーターとともに誘導する作業員が必要だが、人件費などが課題だ。除雪作業は深夜から早朝にかけて実施され、零下の極寒の中で長距離を歩くことも余儀なくされる。誘導員は高齢者が多く、担い手不足の問題もあるという。自動運転技術を活用した省人化はこうした課題解決に寄与するとみている。
江丸准教授は17年度から経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)を受け、19年度までヴィッツ(名古屋市中区)などと連携して積雪の冬道での自動運転技術の開発に取り組んできた。
積雪で道路の白線や標識が見えない状態でも車両にセンサーやカメラを搭載。画像処理技術や人工知能(AI)を活用して走行可能な場所の境目などを判断し、自動走行できるようにする技術だ。除雪機の実証実験でもこれらの技術を活用する。
寒冷地の自動走行実現には、降雪量によっては雪は“邪魔者”となり、画像処理での対応が難しいなどの課題はある。サーモカメラの活用や除雪機の実証なども生かし、自動運転技術のさらなる改良につなげる考えだ。