自動運転「レベル3」の量販車投入へ、でもドイツに比べ倫理規定は遅れているぞ!

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日産自動車は新型SUV「アリア」にも「プロパイロット2・0」を搭載予定

自動運転技術が前進する。法整備により4月から国内で一定の条件付きで自動運転できる「レベル3」の車両の走行が可能となった。これに合わせレベル3の量産車が市場投入される見込みで、自動運転の実用化が一段と加速する。ドライバーがシステムを監視する義務があるレベル2と、その必要性がないレベル3には技術の高い壁があり、各自動車メーカーが開発にしのぎを削る。(松崎裕)

高速道で実用化

■関連法を改定

国内では2019年に改定された道路運送車両法と道路交通法の自動運転に関わる規定が4月に施行された。併せて道路運送車両の保安基準(車検基準)も新たに定められ、高速道路でレベル3の自動運転車の走行が可能になった。自動車メーカーの自動運転技術の国内投入が活発化している。

ホンダは20年中に高級車「レジェンド」でレベル3の自動運転車を投入する。国内では初の投入となる見込み。高速道路での限定された条件下で、ドライバーが視線をそらした状態で運転をシステムに任せられるアイズオフ技術を確立している。さらに米ゼネラル・モーターズ(GM)との連携を深めている。GM傘下のクルーズに出資し、無人ライドシェアサービス専用車を共同開発する。25年をめどに一般道での限定区域をドライバーの操作なしで走る「レベル4」の実現を目指す。

すでに足元ではハンドルの操作や加減速をシステムが担う「レベル2」、ハンズオフ機能など備えた「レベル2プラス」とされる技術が市場投入され実用化が進む。

独BMWは19年に日本では初となるハンズオフ機能を備えたモデルを市場投入した。高級車「8シリーズ」など量販モデルに標準搭載する。カーナビゲーションシステムで設定した目的地を走行中で、全国の高速道路や首都高速道路上であり、時速60キロメートル以下、前走車を追従しており、運転手が前方を向いていること―のすべての条件を満たしている場合に使える。

■一般道も視野

日産自動車も先進運転支援技術「プロパイロット2・0」を高級セダン「スカイライン」に搭載して市場投入した。高速道路上での同一車線内で手放しのハンズオフや、カーナビに連携した車線変更、追い越しを支援する。20年までに交差点を含む一般道での自動運転技術の投入を目指す。21年に発売する新型スポーツ多目的車(SUV)「アリア」にも搭載するなど対応車種を拡大する計画だ。

トヨタ自動車もレベル2に対応した高級ブランド「レクサス」の「LS」を今冬に投入する計画。高度運転支援技術「レクサスチームメート」により、ドライバーの監視の下、車線変更や追い越しが自動で行える。駐車時にアクセルやブレーキ、シフトチェンジを車両が自動で制御する駐車支援システムも搭載する。

EU、ルール定まらず

■あえてレベル2

海外ではドイツが17年の法改正で、公道でのレベル3の走行が可能になったが、欧州連合(EU)での自動運転車を認証するルールが定まらず、国内で走行できない状況が続く。このため、独アウディは旗艦セダン「A8」にレベル3の技術を搭載する計画だったが、法整備が追いつかないため機能をレベル2におさえて車両を販売している。

独BMWは21年までに自動運転の量産車を市場投入する。次期旗艦モデル「iNext(アイネクスト)」を自動運転の基盤車種とする。20年代半ばにはレベル4の市場投入を目指す。

米国では国として統一した自動運転に関する法整備は進んでいないものの、州ごとに自動運転の走行規制を定めている。米グーグル系の自動運転企業ウェイモはアリゾナ州で自動運転タクシーの商用サービスを開始した。米テスラは運転支援機能「オートパイロット」を北米車種に搭載する。ドライバー監視の下、高速道路を自動走行できるものだ。ソフトウエアの更新で市街地の運転支援に対応させる拡張性があり、完全自動運転も可能になる。

コロナ禍など開発の足かせに

テスラのモデル3(テスラのHPから)
■年内になんとか

一方で、自動運転技術の開発は必ずしも順調とはいえない状況だ。電動化を含めたCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応による開発費の増加や新型コロナウイルス感染症の拡大、事故の発生などの問題が開発の足かせになりつつある。

ホンダはレベル3の自動運転車投入を掲げるが、八郷隆弘社長は「新型コロナの影響で一部部品の供給が遅れる可能性があるが、年内になんとか発売に結びつけられればいい」と説明する。

BMWと独ダイムラーは共同で進めていた自動運転の開発を一時休止することを決めた。開発コストや事業環境、経済状況を総合的に判断した。

米ウーバー・テクノロジーズやテスラは、自動運転車による死亡事故を起こし開発が滞るなど自動運転技術の開発に不透明感が漂う。

自動運転システム、30年8390万台 レベル4普及は25年以降

矢野経済研究所(東京都中野区)の「自動運転システムの世界市場に関する調査(2019年)」によると、30年には先進運転支援システム(ADAS)や自動運転システムを搭載した車両が世界で8390万台に達すると予想する。

20年以降に最も成長するのが自動運転レベル2で、ADAS搭載車の普及を後押しするとみている。同研究所はレベル2に加え、ハンズオフ機能やV2X(車車間・路車間通信)と地図情報を利用してレベル2のロバスト(頑健)性を高めた自動運転システムを「レベル2プラス」と設定し合計値を予想した。25年以降は、日米欧中でV2Xの普及が進むことから計4357万台、30年には計5213万台に拡大すると見込む。

さらに自動運転レベル4に関して、20年から日米欧中でカーシェアリングやライドシェア、公共交通、物流などで自動運転車の試験的利用が始まり、25年以降に拡大するとみられる。中国では政府が技術開発を後押ししており、25年以降にレベル4の搭載車が伸びる見込み。

レベル4、レベル5の世界搭載台数は25年で179万台の予測。30年には商用車に加えて乗用車の搭載も期待でき、1530万台に成長すると考えられる。

日刊工業新聞2020年8月18日

COMMENT

志田義寧
北陸大
准教授兼ジャーナリスト

自動運転時代に向けて、日本も環境整備を急ぐ必要がある。その中で忘れてはならないのが倫理規定の制定だ。自動運転車が事故を避けられない時に、どう制御設計すべきか。まっすぐ進めばお年寄りにぶつかり、左右にハンドルを切れば子どもにぶつかる。ハンドルを切っても切らなくても事故が避けられない時に、どうすべきか。いわゆるトロッコ問題だ。社会的損失が最小になるように制度設計すると、そのしわ寄せは社会的弱者に向かいかねない。もう一つ。やはり事故が避けられない時に、ヘルメットを被っている子どもと減るメットを被っていない子どものどちらにぶつかるのがいいのか。ヘルメットを被っている子どもの方がぶつかっても助かる確率が高そうだが、それだと安全のためにヘルメットを被っているのに、それがかえって事故を呼び込んでしまうというジレンマも生じる。完全ではないが、ドイツは3年前に倫理規定を制定した。日本も早急に議論すべきだ。

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