店舗終了する「びゅう」、ホテルや駅ナカなどグループ連携カギに
―新型コロナウイルス感染症の拡大がもたらす旅行の変化を、どう見ていますか。
「これまでも自然災害や不況が人々の価値観を変えてきた。東日本大震災の後には、他人への思いやりや次世代への伝承を考えるなどの価値観が生まれ、ボランティアツアーや心の充足を得られるツアーが増えた。今再び転換点に立っている。コロナ禍で生まれてくる変化は、まだ捉え切れてはいない。不可逆的な変化に今までと同じような商品や価値を提供していては、元のような需要レベルに戻せないだろう」
―シニア層が旅に出かけにくい状況です。
「シニア層の旅行意欲は旺盛だ。旅には行きたいが、家族が心配する。そのためか、添乗員が常に配慮し、安心・安全をしっかり担保する“エスコート商品”の売れ行きが上がっている。ただ感染者数が増えてくると、キャンセルが出る。行き先の方々に歓迎されているか不安だ、という声もある。東日本各地の自治体や観光団体の生の声で、歓迎(メッセージ)動画を作成して機運を高めている」
―JR東日本グループの旅行会社として、エリア内の地域貢献も使命としています。
「(業績が厳しい中で)ホテルや駅ナカ商業施設などグループ全体の連携が重要になっている。観光や出張が減ると、宿泊や飲食、土産品など地域経済に与える影響が大きい。地域とともに“選ばれる観光地”を作る必要がある。これまでのように宿泊だけ、土産品だけで完結するのではなく、旅行客に認められる価値を一緒になって考えていきたい」
―駅・販売機能の変革に伴い、2022年春から旅行商品はウェブ販売に移行します。
「グループ経営ビジョン『変革2027』で社会構造の変化を見据えて、ウェブ販売戦略や店舗を、どう位置づけるか変革するさなかにあった。コロナの影響で実現の必要性、緊急性が増した。(リアル店舗で販売しなくても)駅や車内のポスターは(需要喚起の)トリガー(引き金)になりうる。宿泊とJRのセット価格が変動する“ダイナミックレールパック”を、より訴求していきたい」
【記者の目/東日本の観光地復活に期待】
業界の変化を先取りし、22年春に従来型店舗「びゅうプラザ」の営業を終了する。販売の軸足をネットに移して、さらなる鉄道の利用促進と地域活性化に取り組もうと準備するタイミングをコロナが襲った。利用が落ち込む新幹線の需要喚起はもちろん、東日本エリアの観光地復活に、グループ内外から期待がかかる。(小林広幸)