相次ぐ旅館・ホテルの倒産、「GoTo」は神様か疫病神か

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政府は22日に新型コロナウイルス感染症で打撃を受けた観光業向けの旅行需要喚起策「GoToトラベル」を始める。実施の是非を巡り「人命」か「経済」かという議論が起きたが、命あっての経済活動であるのはいうまでもない。十分な感染対策はもちろん、感染拡大する道府県は速やかに対象から外すなど、機動的で柔軟な対応を求めたい。

全国には観光業が地域経済そのものという地域も多い。コロナ禍で旅館やホテルなど多くの観光事業者が倒産、廃業している。コロナ感染症の収束が見えない以上、どこかで経済活動にかじを切らなければならない。

GoToは事務局入札のやり直しに伴い短期間での設計を余儀なくされ、現時点でも細かな課題は多い。走りながら軌道修正する点も出てくるだろうが、利用者目線を忘れてはならない。例えば国は、16日に感染者が拡大する東京発着の旅行を支援対象外と表明、17日に旅行のキャンセル料を補償しないと発表したが、国民の批判が続出したため、20日に急きょ補償検討へと方針転換した。需要喚起策にいち早く賛同した利用者に損をさせないのは当然の判断だ。

「ウィズコロナ時代の新しい旅のスタイルの確立」という役割もGoToにはある。観光事業者だけでなく、旅行者にも新たなルールが求められる。体調が悪ければ行かない、接触確認アプリを利用する、若者や高齢者の団体旅行を避ける、大宴会をしない―などだ。「お客さまは神様」という言葉があるが、ルールを守らない人は「感染拡大の疫病神になりかねない」という認識も必要だ。

補正予算で執行するため、年度末が迫れば「東京発着の旅行も対象にしたい」という声が出てくるだろう。感染状況が劇的に好転しない限り実行すべきではない。加えて他の道府県に対しても、どれだけ感染者が増えれば対象から外す、という明確な指標を設けた方が混乱は少ない。GoToは感染状況を見極めつつ、的確に人の流れをコントロールし経済を回すという社会実験でもある。

日刊工業新聞2020年7月21日

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