テレワークで需要増! スタートアップが手がける紛失防止タグの中身

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タグは縦3.5センチ、横1.9センチと小型のため身の回りのさまざまなものに手軽に装着できる

「なくすを、なくす」ー。こんなシンプルな企業理念に基づいて日常の困りごとを解決してくれるスタートアップがある。紛失防止タグを手がけるマモリオ。紛失の可能性を通知後に無事、持ち主の手に戻った割合は99.8%。その機能性はもとより、デザインや使い勝手もユーザーの心をつかんできたが、ここへきて新型コロナウイルスによる社会変容がさらに新たなニーズを顕在化させつつある。

身近な問題に着目

財布やカギ、ノートパソコンなど大切な持ち物を紛失したり、置き忘れて冷や汗をかいた経験は誰しもあるだろう。「MAMORIO」は、こうした身近な持ち物に手軽に装着できるシールタイプの小型タグ。近距離無線通信技術「ブルートゥース」を通じてスマートフォンと連携しており、一定距離を離れ、電波をキャッチできなくなると紛失したと判断。スマホに自動で通知する仕組みだ。肝心のスマホを忘れた場合でも、パソコンで紛失場所を確認できる。

こうした機能にいち早く着目したのが鉄道会社である。多くの遺失物管理に頭を悩ますだけに、遺失物センターなどに受信機を設置し、MAMORIOを装着した遺失物が届くと、持ち主に自動通知するサービスを利用客に対する利便性向上の一環として導入している。

テレワークが新たな需要生む

CEO(最高経営責任者)の増木大己さんが前身である「落し物ドットコム」を設立したのは2012年。もともと証券会社でIPO(新規株式公開)関連業務に携わっていたが、多くの人にとって身近な問題である落とし物、忘れ物を解決するサービスが存在しないところに商機を見出しビジネスプランを温めていた。一方、COO(最高執行責任者)の泉水亮介さんは、大手OA機器メーカーを経て経営に参画。学生時代はIoT(モノのインターネット)を専門に学んでいただけに、増木さんが描くビジネスの可能性を直感したという。

COOの泉水亮介さん

以来、MAMORIOのユーザー数は数十万人に上る。販売開始当初はコンシューマー市場を中心に実績を上げてきたが、近年は高齢化社会に伴う課題や、就労形態の多様化を後押しするデバイスとしての活用も広がっている。

例えば、認知症の高齢者の見守り用に製薬大手エーザイと開発したボタン型のデバイスは、町中に設置した受信機やマモリオアプリのユーザーとすれ違うと位置情報が家族に自動通知される。場所や時間を選ばないワーキングスタイルが定着すれば、重要情報を保存したノートパソコンや共有カギ、入館証といった備品管理のあり方も見直しを迫られる。紛失防止の域にとどまらず、企業資産を一括管理するセキュリティー対策を通じた法人需要も高まっている。

「MAMORIO Biz」は革新的なサービスを表彰するさまざまな賞にも輝いている

そんな矢先、突如直面することになった新型コロナウイルス。多くの企業がテレワークの推進を迫られたことが結果として、企業資産の管理ニーズをあぶり出す形となり、同社の製品やサービスに対する引き合いにつながっている。

アップルも参戦か

社会的なニーズが高まる一方、泉水さんは、爆発的な市場拡大を予感させる世界的な動きに注目している。米アップルによる紛失防止タグの開発動向である。アイフォンの「Find MY」アプリを利用し、位置情報を追跡できると巷間に伝わる。同社にとって強力なライバル出現とならないのか―。

「むしろこうした機能の利用が世界的に主流となることで、紛失防止という市場が広がることを期待しています。しかもMAMORIOは、『探す』だけでなく、そもそも紛失を未然に防ぐところに軸足を置いています。設計思想が根本的に異なるのです」(泉水さん)。

確かに、持ち主が一時的に「その場を離れた」のか、それとも「置き忘れ」か。判断するのは容易でなく、そこにノウハウがありそうだ。MAMORIOの場合、スマホに搭載されたセンサーの動きや電波の受信状況などさまざまな条件から判別するという。

ユーザー目線に基づく機能やサービスは一朝一夕に実現するものではない。市場環境が変化しようとも、あるいは変化するからこそ競争力の源泉であり続ける。

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