シニアのスマホライフを後押しするKDDIの“サポート力”
シニアのスマートフォンデビューで、大きな後ろ盾となるのが家族の存在だ。「家族と画像や動画のやりとりをしたい」という理由でスマホ購入に踏み切るパターンが多い。しかし、家族に頼れない、頼ってばかりは心苦しい、という人もいる。KDDIでは、気軽に電話相談できるサポートサービスを提供している。(取材・昆梓紗)
連休明けに入会増加
同社では、初めてスマホを使う顧客に対して「auスマートサポート」という有料サービスを提供している。各種初期設定を行うほか、困りごとや興味があるものに対して、自社サービス以外のものも含め使い方を教えるサービスだ。会員は50代以上が8割を占め、ボリュームゾーンは60代となっている。
「auスマートサポート」会員では、2年前と比較しスマホ率は60代が5割強から8割弱、70代が4割から7割にそれぞれ増加。80代でも6割がスマホだという。
スマートサポート会員数は、大型連休明け、お盆明けなどに増加。「連休が終わって家族が帰ってしまった時に、使い方を教えてもらえないから入りましたという動機の方が多い。家族のサポートの大きさを感じます」(パーソナル事業本部スマートサポートセンター風間孝紀センター長)。
auスマートサポート会員からの問い合わせで特に多いのは、LINEの使い方を教えてほしいというもの。最近だとEC関連も増加している。 またコロナ禍を経て、Zoomを使いたいという問い合わせも増加した。「習い事やレッスンをLINEやZoomで行う先生が増えているらしく、それに対応して教えてほしいという声が多くありました」(風間氏)。新しいサービスであっても、ニュースなどで話題になると問い合わせが増加する傾向がある。
ただし、せっかくガラケーからスマホに変更したとしても、ガラケーと使い方が変わらないという人も多い。「実際にデータ量を見ても、あまり使われていない。費用対効果を考えると、もっとさまざまなサービスを使ってもらえるような取組みをしなければと思っています」(KDDIパーソナル事業本部天野太郎氏)。
コロナ禍では動画サービスの視聴時間も増えたことが予想されたが、シニア層では固定回線の契約数が増加したり、テレビやPC利用が増加しているという調査結果が出ている。高齢になってくるとスマホの小さな画面を見るのが難しい、ということも影響しているようだ。
電話で交流が生まれる
auスマートサポートの主な内容は電話でのサポートだ。音声自動応答ではなく全てオペレーターが対応する。サポートセンターというと無機質なイメージがあるが、顧客とオペレーターに交流が生まれることも多いという。「お客様は一度にいろいろと質問しようとする方が多いですが、一回聞いただけでは覚えられないものです。『今回はここまでお教えしますので、覚えたら次に進みましょう』というように、何度でもご連絡いただいて大丈夫ですと伝えているので、交流が生まれやすいようです」(風間氏)。
その会話の中から顧客のデータを集め、属性や嗜好に合った提案にも繋げている。ECをよく利用するのであればポイントについて、カラオケが好きなら動画配信サービス、などと利用の幅を広げられるような案内を推進している。
スマホがインフラに
最近ではECやキャッシュレス決済についての問い合わせやニーズも少しずつ増えている。同社としても「au PAY」を訴求していきたい考えだ。「小銭を出すのに時間がかかってしまい気になるという高齢の方もいらっしゃって、キャッシュレス決済であれば手軽に払えるという利点を伝えたい」(天野氏)。
KDDIはネットバンキング「じぶん銀行」も提供しているが、まだシニア層には操作などが難しいのではという見方だ。しかし、「スマホ1つで生活インフラを整えられる」という状況はシニアにとって便利であることには違いなく、電気、保険、ECなど生活関連サービスを擁するKDDIが次に狙うステップでもある。ここ数年でシニア層が変わり、デジタルリテラシーが向上しつつある。今後も入れ替えが進めばスマホがシニアの生活インフラに近づく可能性があるだろう。