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シニアの間で「デジタル格差」広がる?

急接近、シニアとオンライン #5 スマホとの付き合い方

シニア層でデジタル格差が拡大する懸念が強まってきた。新型コロナウイルス感染症拡大でデジタル派はオンラインイベント参加など娯楽目的に加え、情報収集など生活基盤を整える用途でもスマートフォンなどを積極活用する。
一方、実際の利用者は一部ユーザーから広がりを欠き、アナログ派が取り残されている兆候もある。ネットサービス事業者や携帯電話会社にとってシニア層のデジタル格差解消が重要課題になる。(昆梓紗)

一部層からそれほど拡大していない?

新型コロナの流行をきっかけに、オンラインで増えた行為のトップは「ネットニュースを読む」―。博報堂がオースタンス(東京都新宿区)と共同実施したアクティブシニア(活動的な60歳以上)向けの調査でこんな結果が出た。状況が変化する中で最新情報を得られる点、地域ごとなど個別ニーズに対応できる点などが支持された要因とみられる。
 これまでシニアは「『写真が撮れる』など主に娯楽目的でスマホと接点を持ってきた」(博報堂新しい大人文化研究所の安並まりや所長)というが、コロナ禍を契機に「生活基盤を整えるためのデバイスとしての位置付けが強まってくる」(同)と指摘する。

【新型コロナで加速、ウェブサービスがシニアの「生活必需品」に】

総務省の2018年度調査で60代のスマホ利用率は、前年度比15.4ポイント増の60.5%と大幅に伸びた。ただシニアのデジタル利用者が、一部層からそれほど拡大していないことを示唆するサインがある。ガラケー(従来型携帯電話)からスマホに切り替えても「データ使用量をみるとあまり使われていないケースは多い」とKDDIパーソナル事業本部の天野太郎氏は明かす。またNTTドコモが開く「スマホ教室」は受講者の約90%が60代以上だが、「リピーターが大半を占める」(ドコモ販売部チャネルデザイン担当部長の藤井政樹氏)という。

ドコモスマホ教室(2020年7月再開後)

生活の質の格差に

オンラインサービスを使いこなしていくデジタル派に、アナログ派が取り残される―。デジタル利用をめぐり、シニアのこんな実態が透けて見える。
 シニア層ではデジタル利用者と非利用者の間で生活満足度に差が出る傾向が指摘される。野村総合研究所が、デジタル利用(月1回以上インターネットを利用するか)と健康度(一人で外出できるか)の関連を分析すると、低健康度でも「デジタルシニア」の生活満足度は、健康な「非デジタルシニア」並みに高いことがわかった。
 デジタルがシニア層の生活インフラとして欠かせないものになってくる中、デジタル格差を放置すれば、生活の質の格差につながる。

【デジタル親和性の高いシニアは生活満足度が高い?】

小銭を取り出さなくてよいキャッシュレス決済、外出が困難でも楽しめるオンラインアクティビティーなどシニアと親和性の高いサービスは多い。コロナ禍で「新しいサービスへの問い合わせが増えている」(KDDIの天野氏)など追い風はある。アナログ派シニアをどう振り向かせるかは、ネットサービス事業者や携帯電話会社にとって社会課題解決、新たなビジネスチャンスの二つの面で重要なテーマになる。

リアルとの融合

デジタルに強くないシニアにどうアプローチするか。カギの一つはリアルにある。シニア女性向けの情報発信やイベントを手がけるハルメク(東京都新宿区)は、動画イベント開催に際しスマホなどの操作を説明する15ページの紙マニュアルを作成して利用者に郵送し、同イベントを成功させた。

【シニアに人気のイベント、「オンライン化は困難」は本当か?】

またメルカリはフリマアプリ「メルカリ」でシニアの利用促進のため新聞折込チラシを配布した。
 野村総研の調べによると、商品購入時にテレビやチラシなど既存メディアを参考にすると回答した割合は全世代では減少傾向にあるが、60―70代では微増傾向にある。同社コンサルティング事業本部マーケティングサイエンスコンサルティング部主任の林裕之氏は「従来型メディアを信頼をもって使い続ける傾向がシニアにはあると思われる」と分析する。

日刊工業新聞2020年7月15日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
シニアの生活基盤となるためには、今のままでは使いやすいとはいえないと思います。それは機種やサービスのインターフェースだけでなく、契約や、登録、操作サポートなどがネックになっていることも多いと感じます。

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