「安さ」「ガラケーの操作感」がシニアに響く!ワイモバイルのスマホ戦略の妙
スマートフォンはガラケーよりも料金が高いこと、操作が不安、などを理由に変更を躊躇しているシニアも多い。そこでソフトバンクでは、ワイモバイルにてシニアのニーズを考えた専用モデルを開発した。ポイントは「ガラケーの良さを生かす」点だ。(取材・昆梓紗)
困りごと自動解決
従来ワイモバイルの顧客は、料金の安さを理由に他社から乗り換えをするようなデジタルリテラシーの高い若者が中心だった。しかし、料金面に魅力を感じるのは若者だけではない。シニアにも訴求できるような機種を目指したのが、2018年に発売開始した「かんたんスマホ」だ。
購入者のボリュームゾーンは60代~70代前半。ハード部分はシニアが使い慣れたガラケーに近い操作ができるような仕組みになっている。ガラケーで使われていた、電話、メール、ホームボタンの3つを引き継いでいて、通知があれば光るので、機種変更後もスムーズに使えるように配慮した。
一方、ガラケーにはなかった音声検索機能は好評だ。不慣れな画面操作をしなくてもいろいろな機能を使えることもあり、音声検索機能ボタンを本体横に用意している。
加えて、誤操作や困りごとがあった場合、スマホの状態を自動解析し、選択肢を選んでいくだけで解決できる「押すだけサポート」を搭載。セルフケアで解決できない場合は専用のコールセンターからサポートする。ただし押すだけサポート利用の68%がセルフケアで解決できているという。
店頭の安心感
「コロナ禍を経て、ぜひ使ってほしい機能の1つが給付金詐欺などを撃退するための迷惑電話対策」だと山田氏は話す。最新の迷惑電話リストをもとに、着信が危険かどうかを自動判断するもの。シニア向けスマホは特に迷惑電話のターゲットになりやすいのだという。
また最近ではキャッシュレス決済に関する質問も増加した。キャッシュレス還元(6月末に終了)の影響や、コロナ禍で現金のやりとりが嫌煙された影響もあって関心を持つ人が増加したのではと見られる。店頭では「PayPay」の初期設定サポートを行っている。キャッシュレス決済の請求を携帯料金の支払いと一元化することで、口座やクレジットカードを新規に登録する必要がないという点も好評だという。「シニアの方々はわからないものへの警戒のが強いので、はじめにしっかりサポートを行えれば利用につながるのだと思っています」(山田氏)。
ワイモバイルでは他の格安SIMと異なり、実店舗を持つことも強みになっているという。対人での説明や、不明点があれば店舗に行って相談できるといったことがシニア層には特に安心感につながる。
プライバシー守りながら見守る
ソフトバンクではスマホと連動しながら、シニア層をサポートするサービスも展開している。
2019年12月に1人暮らしの高齢者などに向けた「みまもりサービス」の提供を開始。スマホや家電の利用履歴を、離れて暮らす家族のスマホアプリに通知するというシンプルな仕組みだ。
家電を使った履歴は「みまもり電池」を使うことで確認ができ、Bluetoothを介して見守られる側のスマホアプリと連携し、家電の使用状況が見守る側のアプリに送信される。
見守られる側のスマホや家電が一定時間利用されない場合に自動で安否確認電話がかかり、応答がない場合はアプリとメールで通知される。
「このサービスの利点は、見守られる側の心理負担が少ないこと」とワイモバイル事業推進本部マーケティング統括部斉藤充氏は話す。他社でも同様のサービスがあるが、見守られる側にカメラを設置したり、行動履歴や位置情報を細かく取得したりといった機能がないため、プライバシーが守られる。また複雑な設定や機器の設置も必要ない。みまもり電池は単3電池を使用する家電であれば何でも装着でき、個々の生活スタイルに合わせての設置が可能だ。
「健康上の問題などがないシニアの方に対し『見守らなければいけない』という意識がある人は少ないと思います。この商品は逆に、そういった見守る意識が低い人にも有用なサービスだと考えます」(斉藤氏)。見守られる側から取得する情報は最低限で、導入のハードルを極力下げることでの普及を目指している。今後はスマホとセットで導入を促進するなどのプロモーションを行っていく予定だ。
スマホがさまざまなサービスへの入り口になりつつある。一見仕組みが複雑で敬遠してしまうシニアも多いが、スマホに関わるサービス全般を相談できる窓口があれば安心して利用できる。通信会社は今後もより幅広いサポートが求められる可能性が高い。