シニアに人気のイベント、「オンライン化は困難」は本当か?

急接近・シニアとオンライン #1 ハルメク

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外出自粛により、会議や飲み会、里帰りといったコミュニケーションのオンラインへの移行が増えている。さらに従来、外出に積極的だったアクティブシニアに向けたサービスもオンライン化が進む。しかし、今までオンラインサービスを利用したことのない人も多く、戸惑う声もある一方で、新しいことを覚えるよい機会だといった前向きな意見も見られる。(取材・昆梓紗)

「ハードル高い?」オンラインイベント

50代以上の女性に人気の雑誌・イベント・通販事業を展開するハルメク(東京都新宿区)では、シニア対象ならではのサポートを充実させている。年間200件以上のイベントを行っていたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2月後半以降のイベントがすべて中止となった。
 イベント参加者は普段から積極的に外出をしていた層。外出自粛により家に籠りきりになってしまい、「ストレスがたまる」「人とコミュニケーションがとりたい」といった声が多く寄せられた。

そこで開催予定だったイベントをオンラインで行い、4月上旬より公開しはじめた。例えば、 草花の名所をめぐるウォーキングイベント「草花散歩」や、体を動かす機会が減ることに対応したトレーニング講座など、4種類10本の動画を公開した。イベント参加予定だった人以外もハルメクのウェブサイトから視聴することが可能だ。
 さらに現在8企画を準備中で、6月には計20本ほどの動画が公開される予定だ。
 また、リアルで人気だったイベントの1つに、毎月100人規模で集まり歌う「あなたと歌うコンサート」がある。しかし現状では大人数がホールで集まって歌うイベントの開催は難しい。そこでプロの講師と一緒に歌えるような動画を作成した。「今後はライブ配信も含め、お客さんがよりリアルに感じられるようなサービスを提供したいと考えています」と同社文化事業部の木村徹己氏は話す。

「最初はハードルが高いと思った」「動画は観たことがなかった」という利用者も多い。そういった声に対応するため、スマートフォンやパソコンで動画再生するための15ページにわたるマニュアルを作成、参加予定だった人に郵送した。さらに分からない人には電話対応も行っているという。
 「シニア向けサービスはサポートが極めて重要。『このマニュアルのおかげで、はじめて動画を見ることができた』という方もいらっしゃいました。マニュアルをかなり詳細にしたこともあり、電話での相談はほとんどありませんでした」(木村氏)。
 また動画の作り方も工夫。平易な言葉を使用し、テロップを必ず入れ、文字の大きさにも気づかった。

動画画面の説明を詳細に記載したマニュアルを事前に配布

「動画を視聴した利用者からは『気持ちがふさいでいたが、講師やスタッフの姿を見て気持ちが明るくなった』といった声とともに、『早くリアルなイベントに参加したい』という意見が多く寄せられました」(木村氏)。
 リアルイベントが開催可能になったとしても、オンラインイベントは継続する予定だ。従来から、同社のイベントは首都圏が中心で、それ以外の人にとっては参加しにくい状況があったという。オンラインイベントなら全国から参加できる。
 イベントはリピーターが6、7割。イベントで顔を合わせて仲良くなり、その後もイベントを通じて交流する参加者も多いという。

新しいことを学びたい

同社では、雑誌の特集や通販商品を作る上でシニアの声を聞く「座談会」を 年間約70回開催し、幅広い意見を募っている。2月後半以降、対面の座談会はすべて中止とし、3月よりウェブミーティングシステムを使ったオンライン座談会へ移行。5月末までに16回開催した。
 オンライン開催はハードルが高いように感じるが、いざ参加者の募集を開始してみると予想以上に応募があった。通常時は首都圏からの応募が多いが、オンラインであれば全国からの参加が可能という点も大きかったようだ。
 参加者に話を聞くと、「初めての体験なので楽しそう」という前向きな意見や、「今後オンラインサービスについて学ばなければ置いて行かれてしまうので良い機会となった」といった反応があった。
 「今、広く使われているオンラインミーティングシステムを『自分でも使うことができた』という社会に参画している感じや、『新しいことを学べた』という達成感があったようです」(ハルメクホールディングス生きかた上手研究所の梅津順江所長)。

オンライン座談会の様子

座談会で新型コロナウイルス流行下での生活について聞くと、「外出できないストレス」を強く感じている人が多いという。「旅行熱も依然強く、今回新型コロナウイルスの感染が拡大したクルーズ船ツアーも参加したいという声があり、驚きました。気を付けながらではあるでしょうが、旅行に行く動きは戻ってくるように思います」(梅津所長)。

オンラインイベントや座談会だけでなく、コンテンツや情報を掲載するサイト「ハルメクWEB」もPVが増加。2月は240万PVだったのに対し、4月は570万PVと倍以上の伸びとなった。マスクの作り方、マスクの洗い方、自粛期間中の家での過ごし方に関するコンテンツのアクセスが非常に多い状況だという。
 ハルメクの読者はシニアといっても50代~80代以上と幅広い。オンラインコンテンツの閲覧は若い層が多いのでは、というイメージがあるが、コンテンツの内容によると木村氏は話す。「例えば『エッセイの書き方講座』では80代の方にも喜んで閲覧していただきました」(木村氏)。座談会にも80代の方が参加。年齢にかかわらず、新しいことが学びたいという前向きさがうかがえたという。
 また、これらの体験を通して、ウェブサービスやオンラインサービスの重要性に初めて気づいたと話す人も多かった。今後、オンラインサービスの使い方を解説するイベントやコンテンツなども期待されている。

オンラインとリアルを融合

オンラインイベントやサービスが増える一方で、リアルイベントのニーズが減ったわけではない。オンラインイベントに参加したからこそ、リアルイベントにより一層参加したくなったという意見も多い。また、地方の人など、オンラインであれば参加できるという声もある。自粛期間が終了した後も、両方の良さを融合させシニア向けサービスを作っていくという。
 月刊誌「ハルメク」は、月刊平均販売部数30万4,604部を記録し、全雑誌中第2位の販売部数となった(※)。女性誌全部門・シニア女性誌部門の販売部数ではトップで、半年で5万6,589部を伸ばしており、この増加部数も全雑誌中第1位だ。シニアに親和性の高い雑誌を軸足にしていることも、オンラインサービスへスムーズに送客できている要因の1つだ。
 雑誌、リアルイベント、オンラインなどさまざまなチャネルを組み合わせたサービスで間口を広げることも、今後のシニア向けサービス拡大には必要だろう。

(※)日本ABC協会が発表した2019年下半期(2019年7月~12月)の雑誌販売部数

【特集】急接近、シニアとオンライン
 コロナ禍によりシニア層もオンライン化に拍車がかかるのか。サービス、通信会社、消費行動や心理などを取材した。

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COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

新型コロナウイルス流行による外出自粛期間でなくとも、遠方に住んでいたり健康上の理由から外出できないなど、イベントに参加できないシニアはたくさんいます。また、そういった方々は今後増える可能性が高く、より一層オンラインイベントの重要性が高まりそうです。

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