「100人100通りの働き方が、もっと当たり前になるように」サイボウズ流テレワークのススメ
「何とか変化をして生き残ろうとする企業と、残念ながら変化できない企業に二極化してしまうのでは」。グループウエア大手であるサイボウズの青野慶久社長は、中小企業の動向をこう分析する。
新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、テレワークに取り組む企業が増えた。一方で急きょテレワークを導入すると社内の情報共有が滞り、業務に支障が出る懸念も生じる。文書管理やスケジュール調整などの機能を持つグループウエアを使いこなせば、テレワークを行いやすくなる。
ただ中小企業は依然、製造業・非製造業とも厳しい状況にある。当座の資金繰りに手いっぱいで、ICT投資まで思いが至らない会社も多いとみられる。しかし青野社長は、自社のグループウエア「サイボウズ オフィス」は1人当たり月額500円(消費税抜き)から使えると訴求。「導入すれば、すぐに元が取れる。資金の面でためらう必要はなく、ボトルネックは“やる気”だ」。
青野社長は従来、「情報共有をオープンにやる文化が大事」と考えてきた。グループウエアは道具に過ぎず、導入と並行して組織の風通しや生産性を改善していかねばならない。サイボウズは自社の働き方や制度・風土改革のノウハウを研修や講演を通じて提供する「チームワーク総研」事業も手がける。「一番変えるのが難しいのは、風土。ボトムアップでは変えづらいので、トップを巻き込みながら進めましょうと話をしている」。
実際、サイボウズはテレワークと情報共有ツールを駆使した働き方改革の旗手として捉えられることも多い。青野社長が育児休暇を3回取得したのも、制度・ツール・風土を整えてきたからだろう。
だが、同社のレベルまで行き着ける会社は多くないのでは―。青野社長はこの問いに、「私たちも手探りで始めた。10年前はできていなかった」と答える。自らがいつ、何に悩み、どう乗り越えたかの軌跡をウェブで公開しているのは、後に続く顧客企業へのエールでもある。今後も自社内での変革を積み重ね、情報発信を通じて共感を得られるか注目される。
(取材・斎藤弘和)