「テレワーク希望」は4割!経済・社会のあり方は次のステップに進むのか
新型コロナウイルス感染症対策として広がったテレワークを引き続き、または新たに利用したいと希望する人が4割いることが、内閣府が21日発表した意識調査の結果で分かった。在宅勤務で減った通勤時間を今後も維持したいと望む人も約7割に上っており、緊急事態宣言下の経験が国民の意識に、少なからず影響したようだ。
調査は宣言が全面解除された5月25日から6月5日まで行い、約6700人の就業者を含む1万人余りから回答を得た。それによると感染拡大期のテレワーク経験率は3割を超え、テレワーク経験者はそうでない人に比べて、仕事より生活を重視するようになったとの回答や、地方移住への関心が高まったとの回答が多かった。政府はこの結果を詳しく分析し、今後目指す経済・社会の基本的な方向性として、2020年度の「骨太の方針」に盛り込む考えだ。
テレビ会議を“無駄に使う”
障害者雇用を目的とした特例子会社のトップに話をお聞きした時のこと。自宅から出られない重度障害者に対して、ネットを通じた就業システムを提供しているのだが、特に重視しているのが連絡体制なのだという。
といって、堅苦しい報告メールのようなものではない。本社の執務室と障害者宅のマイクを常時オンにしておく。室内のガヤガヤが伝わることで、自宅勤務者は仕事をする上での安心感と参加意識が得られる。「○○さん、例の件なんだけど・・・」などと疑問や注意を呼びかけて、報告・連絡・相談をする。「担当外の人が聞いていてもいいんですよ。そもそも仕事なんだし、オフィスって、そんなものでしょう」という話だった。
なんとなく「そんなものかな」と聞いていたが、いざコロナウィルスの感染症対策で自宅勤務をするようになって、このトップの話していたことが身にしみた。文書書きや資料調べを好きな時にできて大歓迎と思ったのは最初だけ。すぐに寂しさが勝る。大した用でもないのに電話して相手と余計なおしゃべりをしたり、苦痛なはずのテレビ会議の時間が来るのを心待ちにしたりしている自分に気づく。
”巣ごもり勤務”で自由度の高い働き方をした結果、生産性は向上するのだろうか。もちろん職種による違いも、個人差もあるだろう。よく作り込まれた業務システムを相手に日夜、仕事をしているビジネスマンなら、場所がどこでも同じ成果が上げられるのかもしれない。だが、それは少数派にすぎない。仕事着に着替えて通勤し、定められた自分の机に座り、職場の空気に触れることが勤労意欲を触発している人は少なくないように思う。
テレワークの意欲を高めるには、どうすればいいか。ささやかな経験から、ふたつの方法を提案したい。ひとつはテレビ会議を“無駄に使う”こと。会議そのもののは、議題に従って淡々と司会が進行するのが一般的だろう。会議の前後の時間に、ログインしている人たちの間だけでも無駄な情報交換をする。カメラに向けて挙手するとか、指でマルやVサインをするようなアクション交えつつ、自分らしさを発信する。ネット上の会議でブレーンストーミングをするような使い方に慣れれば、テレワークも幾分か楽しくなる。
もうひとつは、外出自粛に十分に配慮しつつ、ちょっとした散歩に出ることだ。風通しの良い、混雑していない道を選ぶ。平日日中の自宅周辺はビジネスマンにとっては意外に新鮮なものだ。近くのドラッグストアにマスクが入荷したかどうかを不定期に見に行き、店員と言葉を交わすだけでもいい。オフィスでの残業に比べて、テレワークはダラダラとなりがち。時間の自由度が高いことをリフレッシュに結びつけたい。
人間は人と向き合うことで触発され、活力を得る。ソーシャル・ディスタンスは感染防止には必要でも、中長期的に人間らしさをむしばむ。テレワークにある程度の無駄を許容し、人間らしさを持たせるよう、企業の人事担当者にお願いしたい。