浸透したテレワーク、その裏で増えるオフィス空室率

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テレワークの浸透で空席が多い都心のオフィス

オフィス需要の先行きに悲観的な試算が出てきた。日本総合研究所は、仮に全就業者の1割がテレワークを続けた場合、東京都心のオフィス空室率は15%近くに跳ね上がると試算。ニッセイ基礎研究所も東京都心の2020年の空室率見通しを5月に2・1%(2月時点は1・4%)に下方修正した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワークの浸透は、好調だったオフィス需要に水を差しかねない状況にある。(大城麻木乃)

GDPと連動

日本総合研究所の室元翔太研究員は新型コロナに関連したリポートで、オフィス需要は国内総生産(GDP)と連動しており、急速な景気悪化で循環的な需要減が避けられないと指摘。さらにザイマックス不動産総合研究所の調べ(2018年)によると、在宅勤務制度を導入している企業の1人あたりオフィス面積は2・92坪(9・6平方メートル)と、未導入企業の3・8坪(12・5平方メートル)より小さいなどの傾向がある。日本総研によると、仮に全就業者の1割がテレワークを続けた場合、東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)のオフィス空室率は15%近くに上昇する。これにより「都心5区の平均賃料は2割下落し、リーマンショック後の水準まで落ち込む可能性がある」と指摘する。

成約賃料低下

ニッセイ基礎研究所の吉田資主任研究員は、不動産投資レポートで、東京都心部Aクラスビル(5区で1万坪以上など)の20―24年の空室率予想を5月に2月時点と比べて0・4―0・9ポイント悪化と下方修正した。景気の悪化や在宅勤務の増加でオフィス需要は弱含むと分析する。空室率上昇により20年12月の成約賃料は1坪・月3万7000円台と、2月予想の4万2000円台から低下すると見通す。

三幸エステート(東京都中央区)は5月の東京都心5区の空室率を0・53%と4月より0・05ポイント上昇したと集計した。3月の統計開始以来の最低値(0・41%)から2カ月連続で小幅な上昇にとどまり、「新型コロナウイルス感染拡大の空室率への影響はまだ本格化していない」(今関豊和チーフアナリスト)と見る。

ただ、テナント退去前の募集床も対象とした「潜在空室率」は5月に2・84%と、1月の2・08%から「はっきりと上昇の動きがみられる」(今関氏)。このため「6月以降、空室率も顕著に上がってくる」(同)と予想する。

三井不動産や三菱地所など大手不動産各社は、7―9月期から徐々に経済は回復するとの前提で21年3月期の業績を予想している。だが、テレワークの拡大がオフィス需要に影響を与える事態が顕在化すれば、業績の見直しは避けられそうにない。

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