資生堂のデザイナー全員が学ぶ、手書きの「資生堂書体」とは?

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資生堂は100年先も輝きつづけ、世界中の多様な人たちから信頼される企業になるため2019年に「THE SHISEIDO PHILOSOPHY」という新たな企業理念を策定した。

同年には「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」という企業使命も定めた。制作したのは100年以上も前に発足した意匠部をルーツとするクリエイティブ本部所属のコピーライターだ。

資生堂書体の原型は舞台美術家などとして名を成した小村雪岱(せったい)による手書きの素案が由来となっている。伝統は脈々と受け継がれ、現在でも同本部に配属されたデザイナーは全員、社内で制作した教則本を使い1年程、手書き書体を学ぶ。

まずは自分の名前から書き、資生堂のエレガンスさを象徴する腰高で流麗な線を学ぶ。形をなぞらえるのではなく、絵を描くように線をつなぐことで、美しさのバランスを会得する。写植やパソコンのフォントとは異なり、描き手や書かれるものに応じ変わっていく有機的な書体という側面が重視され、デザイナー教育という文化を支える。

意匠部を立ち上げた福原信三は「ものごとはすべてリッチでなければならない」と言い続けていた。意匠に対しては「リッチだね」「リッチじゃないね」という基準で判断し、お客さまの心が豊かになることを常に意識し指示を行っていた。

資生堂のものづくりの原点には、サイエンスをベースに美の形を作り出していくというポリシーがある。デザインは技術と表裏一体的なもので、技術が新しくなると新しいデザインが誕生する事象を現在でも目の当たりにしており、このポリシーを信条としている。

最近ではビジョンをしっかり持ったうえで、フラットな組織づくりに取り組んでおり、自前の組織だけで完結せず、社内外の知見や経験を生かすネットワークづくりに力を入れる。こうした姿勢は今年開設した社内のコンテンツスタジオ「Creative Lab(クリエイティブ・ラボ)」にも反映。外部の力を取り入れ、新しいクリエーションを生みだし情報を発信する考えだ。(秋山浩一郎・デロイトトーマツベンチャーサポート第1ユニット)

日刊工業新聞2020年7月10日

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