初代社長の生んだ花椿に見る、デザインに価値を与える資生堂の文化

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花椿マークは時代と共に少しずつデザインを変えながら現在に至る

資生堂のシンボルである花椿(つばき)のマークは、椿の花を水に浮かべた様子を表現したもの。その現場に立ち会い絵筆をとったのが、創立者である福原有信の三男で資生堂の初代社長、信三だ。

信三は米国に渡って薬学の修士を取得した後、フランス・パリで芸術家らと交流し写真も学ぶ。こうした経歴も手伝い、同社の経営に芸術を持ち込んだ。“手腕”を発揮したのは事業を受け継いだ翌年で、薬品・薬局から化粧品に事業の軸足を移した時のことだ。

当時は大量の粗悪品が流通していたため、品質体制を強化する目的で研究室を創設した。同時に立ち上げたのが、他社には存在しなかった意匠部だ。世の中には文字を駆使した誇大広告が蔓延(まんえん)しているため、形状や模様、色彩などを通じ美観を訴求することが大切という考えを踏まえて設立することになった。

信三直轄のデザイン組織は先見の明があった。意匠部の歴史は100年以上も続いており、多くの著名なクリエイターが関わってきている。

組織の運営法も当初から画期的で、社員やフリーランス、元社員など肩書に関係なく、有能な人間であれば一緒にチームを結成し、新しい創造に取り組んできた。良いものや新しいもの、画期的なものを外から取り入れて創る精神は、山名文夫のロゴや小村雪岱(せったい)の資生堂書体、アドリアン・フルティガーの欧文書体など有名な“作品”を輩出した。

一昨年からは「米国のデジタルクリエイティブファームとのエンベディッドの仕事を進めている」と、チーフクリエイティブオフィサーの山本尚美は語る。エンベディッドは、単なる外部委託先ではなく、組織の中に取り込むチームのことを指す。外部の知見を自社に蓄積し、外部に資生堂の文化を移植するとともに、その場にいる人の意志やスキルを尊重した、多様性のあるチーム編成が特徴だ。

資生堂にはデザイン自体に価値を与えていく文化がある。それを支えているのが優秀なデザイナーが集まりやすい社風を築いている点だ。デザイン組織を運営する上で重要な役割を果たす手法と言える。(敬称略)

(松田雅史・デロイトトーマツベンチャーサポートMorningPitch・新規事業開発ユニット)

日刊工業新聞2020年7月3日

キーワード
資生堂 デザイン 化粧品

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