自らもキャンパーだからこそ!時代を先読みできた「焚火台」

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キャンプ場を備えた本社(新潟県三条市)

スノーピークの全デザイナーはキャンパーで、自らがキャンプや登山で必要とするものや、世の中にない商品をデザインする。アイデアからアウトプットに至る開発の全工程に携わるため、デザイナーの意思は、ブランド構築に大きな影響を与えることになる。

自身の思いを遂げるには、社長へのプレゼンテーションで、納得してもらうことが前提条件となる。その場では「本当にこの価格で自分は購入したいのか」「世の中に出たら何が変わるのか」といった点について、明確な答えが求められる。強い思いが商品化に直結しているからこそ、その商品について誰よりも語ることができ、ユーザーへの訴求力も高まるそうだ。

スノーピークによるデザイン・ものづくり戦略は「市場創造」(高井文寛副社長)という側面もある。代表事例は「焚火(たきび)台」だ。

1990年代までは、地面に薪(まき)や石を組みたき火を行う直(じか)火が一般的で、お金をかけるものではなかった。ただ、芝は燃え河原が汚れるなどの弊害が生じるため、将来的には環境面から直火を行えなくなると、先読みしていた。

この問題を解決するにはたき火専用の台を作ればよいと思いつき、本社を置く新潟県の地場産業であるステンレス加工技術を活用し、スノーピークは96年に初めての焚火台を発売した。

約3年が経過して予測通り、芝生や河原のキャンプ場で直火禁止の動きが進んでいく。これに伴い年を追うごとに販売台数は増え、今では焚火台を使うことがマナーとして定着。アウトドアショップの定番品になり焚火台という市場を創造した。

社員全員がキャンパーなので、フィールドテストも自分たちで行う。9年前に移転した新潟県三条市の本社にはキャンプ場を備えているため、試作モデルを活用したテストとユーザーレビューを繰り返し行える。イベントなどを通じてユーザーからのフィードバックも直接聞くことができる。

ブランドの発信側もユーザーという特性を生かし、顧客と一緒にブランド自体を創り上げていくという意思が、一連の戦略に込められている。(松田雅史・デロイトトーマツベンチャーサポートMorningPitch・新規事業開発ユニット)

日刊工業新聞2020年6月5日

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