医工連携で日本人に合う「股関節装具」を開発
医療従事者と共同開発
日本シグマックス(東京都新宿区、鈴木洋輔社長、03・5326・3200)は、産業医科大学若松病院(北九州市若松区)の医師と股関節装具「エスユー ヒップ ブレース」を共同開発した。日本人の体格に合わない海外製品ではなく、患者にフィットする製品を作りたい。そんな思いが共同開発の原動力になっている。鈴木社長に医療従事者と製品を開発した経緯や、今後の展望について聞いた。(森下晃行)
―2019年6月に股関節装具を発売しました。「股関節の深屈曲のしすぎなどで大腿(だいたい)骨と骨盤が衝突し、股関節唇という軟骨組織が損傷することがある。股関節装具は太ももの動く範囲を制御することで軟骨を保存する製品だ。既存の海外製品に比べ日本人にフィットしやすく、快適な装着感を追求した」
―開発を決めた経緯は。「海外製の装具は日本人の体格に合わないだけでなく“欧米ファースト”に作られていることが多い。日本で売れないとすぐ販売が終了し、患者が継続して使えない問題もあった。そんな中、産業医科大若松病院の医師からの打診を受け、『患者の役に立つ物を作りたい』と考えた」
―医師と共同開発する理由や、課題について教えて下さい。「日本の医師は世界的に見て優れた手腕や知見を持っており、治療に必要な要素をきちんと理解している。ビジネスとして利益を得たいというより、よりよい治療を提供したい熱意から製品の開発を持ちかけられる。弊社は整形外科領域に強みを持ち、多様な症例に対応できる」
「製品開発における医師の発想は医療現場の困り事が出発点だ。売り上げにつながらない話もある。収益化も重要だが、広く医師の意見を聞いてニーズを掘り起こすことも大切だ。製品化のコストが高すぎる場合も二の矢、三の矢を準備して対応している」
―これまで医師と約10製品を共同で作ってきました。今後の共同開発の構想は。「医師との開発は製品に付加価値を生み出すプロセスの一つだ。今後も積極的に開発していく。現在は若年層を対象にした装具を整形外科医と開発している。現在は臨床評価中で、数年以内の発売を目指す」
【チェックポイント/整形外科領域で実績】
19年の医療機器の国内市場規模は約2兆9000億円。国は医療機器を成長市場に位置付け、開発人材の育成に力を入れている。一方、医工連携などで医師と共同開発に取り組む企業は多いが、医薬品医療機器法への対応や医師との関係構築など課題もある。日本シグマックスの装具は医療機器ではないため、法規制への対応が必要なく、すでに整形外科領域で全国の医師と信頼関係を築いている。これが医師との提携を容易にしている。