皮下にカテーテル埋め込み安全に投薬、「医療を文化」に
メディコン(大阪市中央区、阿知波達雄社長、06・6203・6541)が販売するCVポート「パワーポート」は、皮下に埋め込み安全に投薬ができる医療機器。必要以上に血管を傷つけず薬を体内に入れられる。50年ほど前に開発されたが、患者の生活の質を向上させる点から近年、認知度が高まっている。同社は埋め込んだままMRI(磁気共鳴断層撮影装置)を使用できる乳がん患者向け製品も近く発売する予定だ。
【医療を文化に】
「医療を文化にしたい」とイムス札幌消化器中央総合病院(札幌市西区)の岸宗佑医師は熱弁を振るう。おしゃれをする、温泉に入る、おいしいものを食べる―。点滴を入れるだけでそれまで当たり前だったことが途端に難しくなる。がんの苦しみはそういった点にもあると岸医師は指摘する。
カテーテルと薬を注入する「箱」から構成するCVポートは抗がん剤の投与や点滴を安全にする製品だ。埋め込み後は目立たないため服装の制限もなく、感染症に気をつければ湯にもつかれる。がん治療を続けながら生活の質を維持できる。
メディコンのペリフェラル インターベンション事業部マーケティング部(オンコロジー)の田中信人部長は、CVポートのメリットを「血管を傷つけないこと」と説明する。カテーテルを血管につなぎ、シリコン膜のふたがついた箱とともに皮下に埋め込む。点滴の際は皮膚の上からシリコン膜越しに針を刺し、箱の中に薬を注射する。同社のパワーポートは耐圧性が高く、粘度の高い造影剤なども注入できる。
メディコンは乳がん患者向けのCVポートを近く発売予定だ。乳がんの診断ではMRIを使用する。新製品は金属を使っていないため画像に悪影響を与えず撮影でき、腫瘍の近くに容易に留置できる。
末梢(まっしょう)血管に繰り返し注射針を刺すと次第に血管が硬化する。針が刺しにくくなるだけでなく、血管そのものもボロボロになり血管外に薬が漏れ出て炎症を起こすこともある。
【内科医でも】
国内では末梢血管が傷ついた後にCVポートを埋め込む場合が多いが、早期から埋め込めば「血管を温存できる」(田中部長)。そのためには医療者の意識も変わらねばならないと岸医師は訴える。
埋め込みは主に外科医が行ってきたが、岸医師は内科医でも簡単にできる手術法を考案した。主要な埋め込み部位である前胸部以外にも留置でき自由度が高い。この手術法の普及に岸医師は尽力している。
CVポートの埋め込み手術の実施率は年間約10万例。徐々に認知度が高まり、患者自らCVポートを選択することも増えてきたが「まだ知らない患者が多いのも事実」と田中部長は指摘する。同事業部の金沢貞浩事業部長は「安全かつ痛みの少ない治療法を多くの人に知ってほしい」と話す。医療者・患者の双方がより良い医療の選択を求められている。