「塩ビ管の色」を車に…?マツダの色はなぜ印象的なのか

色が変えるビジネス #1 マツダ

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「剥き出しの塩ビ管と金属の光り方を合わせたような色」と聞いて、どんなイメージを持つだろうか。マツダは2019年に「MAZDA 3 Fastback」と「MAZDA CX-30」にて「ポリメタルグレーメタリック」という色を発売。2019年には優れた車の色を表彰する「オートカラーアウォード」にて最優秀賞を受賞した。

「赤」はなぜ人気か

日本での乗用車の2018年販売色内訳を見てみると、白、シルバー、グレー、黒といったいわゆる「ニュートラルカラー」が60~70%を占めている。有彩色は少ない。これは海外でもほぼ同じ傾向となっている。  
しかしマツダでは「赤」の販売比率が最も多く、2割強を占める。コンパクトカーであれば他社でも比較的有彩色の比率が高いが、マツダでは大型車であっても赤の比率が高い。なぜマツダは赤が人気なのか。

同社デザイン本部シニアクリエイティブエキスパートの岡本圭一氏は「他社を見ても、ブランドイメージとカラーは密接に結びついていると考えています」と話す。

デザイン本部の岡本圭一氏
 マツダでは2012年から赤を中心としたデザイン戦略を推進してきた。それ以前はアスレチックなイメージを推しており、各車種で元気で鮮やかなカラーを展開していた。しかし2010年に「生命感のある美しい動きをデザインで表現する」という「魂動(こどう)」をデザインコンセプトに据えた。スモールプレイヤーの立場からブランドを立たせることを考えた際、車種ごとにデザインコンセプトを変えるのではなく、統一感を持たせ「群」としてアピールすることにした。カラーバリエーションも基本的には全車種共通とした。
 その際、ブランドを象徴する色として「ソウルレッドプレミアムメタリック」を開発。この戦略が、「マツダといえば赤」というイメージを浸透させたのだ。
3代目アテンザ (2012年発売) ソウルレッドプレミアムメタリック
 「マツダの歴史を振り返っても、赤をテーマカラーに取り入れた車種は好調でした。象徴的なのが1980年に発売したファミリア。オイルショックで落ち込んだ需要を押し上げ、それ以降も赤への思い入れが強く、新しい赤を作ってきた」(岡本氏)。

「ブランドを象徴するためには、誰もの印象に残る“オンリーワンの赤”でなければなりません。また、“カラーも造形の一部”という思想のもと、造形の美しさを色でも表現することを目指しました」(岡本氏)。求められたのは鮮やかかつ、深みのある赤。デザイン、エンジニア、サプライヤーを含めたタスクチームをつくり、会議を重ねながら開発にあたった。
 2016年には同じプレミアムカラーシリーズとして鉄の美しさを表現した「マシーングレープレミアムメタリック」、2017年に新しい赤として「ソウルレッドクリスタルメタリック」を開発した。

マシーングレープレミアムメタリック(右)、ソウルレッドクリスタルメタリック

樹脂の溶けたヌメリ感を色に?

一方で、2019年に受賞した「ポリメタルグレーメタリック」は通常色。プレミアムカラーに対し低コスト、短期開発ながら新しいアイデアや価値を提供する必要があった。
 「『光の映り込みをもデザインする』というデザインテーマで作られた車を見た時、面の曲線の美しさが印象的でした。この美しさを生かす色を考えた際に、樹脂の溶けたようなヌメリ感のある表情が合うのではと思いつきました」(岡本氏)。さらに造形全体を際立たせるために、金属のような光方をプラスすることでより新しい表現ができるのではと、色を作りこんでいった。

色を考える際にヒントになったのが、最近トレンドとなっている「古い倉庫をリノベーションしモダンな家具を入れた空間」だ。「そこを見ていた時、本来ならば壁の中に埋め込まれている建築資材が剥き出しになっているのに興味をそそられました。その塩ビ管の色が、青みがかったグレーで、これは車に取り入れられるのではと考えました」(岡本氏)。
 従来開発してきた「ソウルレッド」や「マシーングレー」は万人が美しいと思う色。それに対し、塩ビ管のように一般的には高価値ではないものに新たな価値を見出すような色に挑戦しようと考えたという。
 また、リノベーション倉庫は古いものと新しいものの組み合わせで新たな魅力が生み出されている空間だ。これも「違った要素の組み合わせで新しい価値を生む」というアイデアに繋がっていった。

ポリメタルグレーメタリックは2つの車種に採用されている。外装色は同じだが、内装の違いでターゲットの違いを表現している。
 「MAZDA 3 Fastback」では40代の男性がターゲット。強いイメージと大人の魅力を兼ね備えたバーガンディを組み合わせた。

MAZDA 3 Fastback
MAZDA 3 Fastback 内装
 一方「MAZDA CX-30」はそれより若いファミリー層。明るく開放的なイメージをもつネイビーとグレージュの配色となっている。

MAZDA CX-30
MAZDA CX-30 内装

購入時に色を重視される

「マツダの購入者は色を重視する割合が高い」と国内営業本部ブランド推進部主幹の齊藤圭介氏は話す。他社では購入者の49%が車の色を重視するというが、マツダでは54%だ。

国内営業本部の齊藤圭介氏
 また、輸入車からの乗り換えや比較検討をする顧客が増加しているという。「指名買いが増え、デザイン性の高さやシンプルな内装への評価が高まっている実感があります」(齊藤氏)。デザインに対する意識の高まりに応じて、外装の傷などの保障をするサービスなども用意している。
 「色の持つ意味はすごく大きく、イメージを植え付けます。今後もマツダはどういったブランドなのかをアピールし、考えを顧客に素直に伝えられるような色を提供していきたいと考えています」(岡本氏)。自動運転や他業種からの参入など、自動車の存在は状況は大きく変わりつつある。その中でもマツダは、「走る喜び」につながる色やデザインを変わらず追求していく。

【特集・色が変えるビジネス】
 商品やサービスのイメージを伝え、消費者の心を直感的に掴む「色」。その背景には、トレンドを細かく分析したり、世界観を作りこんだりと各社の綿密な戦略がある。色が変えゆくさまざまなビジネスを取材した。

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COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

マツダの色はどれも、一言では言い表せない独特さを持っています。違う色であっても根底に流れる同じデザインコンセプトを感じさせなければならないため、その開発にはたいへんな苦労があったと思います。今後どのような色を作り出していくのか、楽しみです。

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