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武漢から在庫回収・出荷した自動車部品メーカー、「工場再開」戦略を聞く

ヨロズ・志藤会長兼CEOインタビュー

新型コロナウイルス感染症の発生地となった中国湖北省。省の方針で10日まで休業期間とされており、現地日系自動車関連メーカーも生産を1カ月以上、止めている。サプライチェーン(供給網)の状況や今後の見通しについて、同省武漢市に工場を構える部品メーカーのヨロズの志藤昭彦会長兼最高経営責任者(CEO)に聞いた。

―武漢工場の状況は。
「サスペンション関連部品を生産し完成車メーカーに供給している。出荷先は中国国内が9割以上で、湖北省以外の顧客との取引も多い。言うまでもないが、全く生産できていない。同省以外の完成車工場は2月中旬頃から稼働を再開しており、部品供給を求められた」

―どう対処したのですか。
「地元政府の許可を得て、武漢工場から在庫を回収して出荷した。一部顧客からは4回程度、要求があった。工場に立ち入る人員を最小限に留めるなど細心の注意で対応した。在庫の“救出”で、なんとかサプライチェーンをつないだ」

―11日の稼働再開に向けた準備は。
「当社の広州工場(広州市)から武漢工場の生産現場に指示できるよう遠隔会議システムなどを整えた」

―再開後の見通しは。
「武漢工場の従業員は約580人弱。うち300人は省外におり、すぐ戻れない。一方、省内にいる残りの従業員のうち約200人からは『出勤できる』との確認がとれた。すぐフル稼働は無理だが、生産は再開できそうだ」

―地元政府の方針で休業期間が再延期された場合の対応は。
「武漢工場で生産する部品152品目のうち91%に当たる138品目は当社の世界各国の別の工場で代替できる。一方、残り14品目はカバーできず、頭の痛い問題。ただ、武漢工場から当社の広州工場に設備を移管すれば対処できる。大がかりな作業が必要になるが、最悪の事態になっても切り抜けるシナリオはある」

【記者の目】
ヨロズは中国、米国のほか南米各国、アジア各国に工場を構える。このネットワークが、武漢工場の91%の部品を代替できるバックアップ力の源泉。グローバル化は、新たなリスクを持ち込んでくるが、リスク管理でそれ以上の威力を発揮する。

(編集委員・後藤信之、渡辺光太)
日刊工業新聞2020年3月10日

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