自動車販売は4年連続マイナスへ、「日米中」よりもっとやばい市場

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米国工場で生産するトヨタのピックアップトラック(米国トヨタ公式フェイスブックページより)

自動車の世界市場は減速傾向が続く。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は2019年は約9276万台(前年比3.5%減)で着地し、20年は9150万台(同1.4%減)と見通す。米中貿易摩擦や英国の欧州連合離脱(ブレグジット)は、問題の最悪期は脱したものの依然として先行きは不透明。また環境規制の導入など販売動向を左右しかねない波乱要因もある。20年の中国、米国、日本の3大市場はどう動くのか―。19年を振り返りつつ、占う。

【中国】米中摩擦懸念、回復力強さ欠く

中国の19年の新車市場は2600万台規模で着地するとみられる。2808万台(前年比2・8%減)で28年ぶりの前年割れを記録した18年に続き2年連続のマイナスとなる。金融規制強化やインフラ投資抑制で株価が低迷したほか、米中貿易摩擦では「中国の方がマイナス影響を大きく受けている」(ブリヂストンの津谷正明最高経営責任者〈CEO〉)状況で消費者心理が冷え込んだ。

そうした中、全体市場で日系メーカーではトヨタ自動車やホンダが健闘し前年比プラスを確保したことが確実視される。中国市場全体で高級車カテゴリーは好調で、トヨタは高級車ブランド「レクサス」も伸びた。

20年市場は回復に向かいそうだが、力強さに欠けるとの見方が強い。懸念材料は米中貿易摩擦。両国は貿易交渉で「第1段階の合意」に達したが、第2段階以降の合意がスムーズに進むか懸念する声は根強い。

また「国6」と呼ぶ新たな排ガス規制に適合した新車の投入時期が「地域ごとに異なる状況下で、販売の混乱は続くとみられる」と英調査会社LMCオートモーティブは指摘する。

中国政府は19年12月、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などの「新エネルギー車」が、25年の新車販売に占める割合目標を25%に引き上げた(従来は20%)。足元では政府補助金が減額されたことを受け、新エネ車の販売に急ブレーキがかかったが、中長期的には中国市場の主戦場になる見通し。

トヨタはレクサスや小型スポーツ多目的車(SUV)「C―HR」などのEVを20年に相次ぎ投入する。中国で日系メーカーの新エネ車の実力が問われ始める年になる。

昨年の上海モーターショーで初公開したトヨタのSUV「C―HR」のEV

【米国】1700万台下回るも小幅減

米国の19年の新車販売は1700万台規模を維持した模様。前年と比べ微減の水準だ。低失業率が続き消費者マインドが比較的堅調だった。さらに年初は金利上昇により車両の実質的な販売価格が上がるリスクが指摘されたが、5%水準で落ち着き、水を差す事態にはならなかった。日本メーカーではホンダやSUBARU(スバル)が堅調だった反面、日産自動車、マツダは苦戦した。

米市場は16年に過去最高の1755万台を記録した後、ピークアウトしたとの指摘が多い。20年は1650万台規模に縮小するが、11月に大統領選があり、大きく崩れることはないとの見方が支配的だ。

ただ新車販売の7割を占めるまでに成長した「ライトトラック(ピックアップトラックやスポーツ多目的車〈SUV〉)」は趣味性が高く、中西孝樹ナカニシ自動車産業リサーチ代表は「経済が悪化すれば、一気に需要が萎む。米市場は要注意だ」と指摘する。

足下ではメーカー各社が拠出するインセンティブ(販売奨励金)は上昇傾向にあり、収益圧迫要因になる。多くの日系メーカーにとって米国事業の採算性改善は重要課題。値引きに頼らず売り切る商品力とブランド力が試される。

【日本】買い替え一巡、前年割れ

日本の19年の新車市場は前年並みの525万台規模に落ち着きそう。1―9月の累計販売は前年同期比で3・1%増と伸びていたが、消費増税や台風の影響などにより、10月は前年同月比24・9%減、11月は同12・7%減とブレーキがかかった。

20年予想は調査機関によって490万―520万台と開きがあるが、前年割れは共通する見立てだ。杉本浩一三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアアナリストは減少要因として、消費増税に伴う新車購入の負担増、自動ブレーキなどの新技術が喚起した買い替え需要の落ち着き、東京五輪開催に伴う自動車以外の消費拡大などを挙げる。

一方、2月にはトヨタ自動車が小型車「ヤリス」、ホンダが同「フィット」の新型車を投入する。両社それぞれの戦略車であるだけに、小型車商戦が盛り上がりそう。軽自動車人気も持続する可能性が高い。またトヨタや日産自動車、ホンダがEVの新型車を発売する計画で、EV市場が活発化するか注目される。

メーカー別では日産の動向が視線を集める。同社はここ数年、新型車の数が少なく販売が苦戦しているが、20年は5モデル程度を発売する計画。浮揚のきっかけをつかめるかが焦点となる。

6年ぶりに全面改良して2月に発売するホンダの小型主力車「フィット」
(取材・後藤信之)

日刊工業新聞2020年1月1日

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中西孝樹
ナカニシ自動車産業リサーチ
代表

2020年の世界需要は4年連続の減少が避けられそうもない情勢だ。数量減少が不可避な情勢の中で、厳しい経営のかじ取りを余儀なくされる1年となりそうだ。記事にある通り、日米中の主力3市場の悪化に加え、我々が最も懸念するのが欧州市場の後退だ。2021年の95gのCAFE規制準拠に向けて、2020年からは価格引き上げ、製品構成変更など、需要を押し下げる影響が連続する。 日米中市場以上に大きく下落するリスクが高く、要注視である。

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