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ゴーン社長は初代「GT-R」の事業化をわずか2週間で決裁した

技術の評価より、その先をみんなで議論する方が創造につながる
ゴーン社長は初代「GT-R」の事業化をわずか2週間で決裁した

「GT−R」2017年モデルを紹介する西川CCO

**開発者・水野和敏氏が語る秘話
 2003年12月16日。ゴーンさんに『“ミスターGT―R”になってくれ。お前に全部任す』といわれた。その2週間後には、今の車両図面、性能、価格など持っていった。その時点でゴーンさんは開発にゴーサインを出した。普通の経営者だったら2週間で性能や投資額を持ってきて信用しますか。もっと時間をかけ検証しろという。ゴーンさんと僕の夢が一致したから。

 GT―Rは製品ではなく作品。絵もそうだが、作品は「すごい!」という感動がないと認められない。作品と製品の違いは人がどこまで介在するか。開発チームは通常のクルマの半分。

 人を減らすことはコストカットではなく人を信じること。はっきりいう。スタッフ超一流を集めたわけではない。今までの、賢く跡をたどる手法で世界で戦うスーパーカーはできない。挑戦できる人づくりが大事なんだ。


 僕は、GT―Rを通して日本人が本来持っていた人のためのモノづくり、夢づくりのすばらしさを問いかけたかった。製品という観点でみたら中国が追い上げ、ブランド力なら欧州。日本はモノづくりの行き場で迷っている。今の風潮は大量消費、賢いモノづくりに流れている。

 自動車会社はエコカーみたいに理性で乗るものと、憧れを持つクルマの両方をつくることが使命。欧州の古城には有田焼が宝物として残る。そこから『マイセン』などのブランド食器が生まれた。火付け役は日本だよ。欧州のクラフトマン(職人)は王様のため、日本人の匠は庶民のためにモノを作った。日本ほど欧州文化に刺激を与えた人種は他にいますか。

 GT―Rは確かに技術的にすごいが、技術は手段にすぎない。技術を評価することより、その先をみんなで議論する方がよほど創造につながる。
 
【記者の目・ゴーン社長は意外に“感動屋”】
 東京モーターショーを見ても、GT―Rの集客力は凄(すさ)まじい。ただ実際に買う人はほとんどいないはず。日本人は世界に類のない「感動したがりの人たち」だと思う。GT―Rを見てどれだけの人が感動したか分からないが、最近の日本車に「ときめき」が枯渇していたのは間違いない。ゴーン社長は経営者として現実主義者だが、実は意外に“感動屋”という気もする。
(文=明豊)
日刊工業新聞2007年11月2日付※肩書き内容は当時のもの

次期GTーRは「最高の走行体験を提供」


 日産自動車は夏に発表する高級スポーツカー「GT―R」の2017年モデルを公開した。3・8リットルのV型6気筒エンジンを搭載し改良型6速デュアルクラッチトランスミッション(DCT)と組み合わせることで、中速―高速域でスムーズな加速を実現した。新設計のチタン製合金マフラーを搭載し、不快な音を低減したエンジン音を楽しめるという。価格は未定で、夏に公表する。

 横浜市内で開いた発表会で、西川廣人チーフコンペティティブオフィサー(CCO)は「日産の技術と車への情熱を詰め込んだ」と完成度に自信をみせた。

 デザインを大幅に変更し、グリルには最新のメッシュパターンを採用した。開口部を拡大することで冷却性能を高めながら空気抵抗を抑え、従来の空力性能を維持した。発表会で中村史郎専務執行役員は「最高の走行体験を提供できるといっても過言ではない」と強調した。
日刊工業新聞2016年4月4日付自動車面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
GT-Rは日産のスポーツカーの象徴です。まだ詳細は明らかになっていない部分も多いですが、今後に期待ですね。 <追加> 2007年の東京モーターショーは「GTーR」の話題一色だった。開発責任者の水野さんのインタビューを今でも強烈に覚えている。(明豊

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