マツダ「CX―3・4・5・6・7・8・9」、日本で販売していないのは?
「4」「6」「8」「9」は日本投入も噂されるが
マツダは28日、「CX―3」にガソリンエンジン車を追加して、7月27日に発売を予定すると発表した。従来のディーゼルエンジン車と同じく内装や外装別に4グレードを用意し、消費税込みの価格は210万6000円から。ディーゼル車より約30万円安く設定し「よりお求めやすくした」(冨山道雄商品本部主査)。またガソリン、ディーゼル関係なく全グレードで先進安全技術「アイ・アクティブセンス」を標準装備した。月販2000台を目指す。
ガソリンエンジン車は、きょう29日に予約受け付けを開始する。排気量2000ccクラスの「スカイアクティブ―G2・0」を搭載。2018年排出ガス基準の75%低減を達成した。現行より使用実態に近づけた新燃費表示基準「WLTCモード」の認可も取得した。
「アイ・アクティブセンス」では、自動ブレーキ、オートマチック車向けの誤発進抑制制御技術、車線逸脱警報システム、対向車に応じてハイビーム/ロービームに切り替えるライトシステムなどを標準装備。経済産業省などが啓発を進める「安全運転サポート車」の最高ランク、「サポカーS・ワイド」に、マツダ車で初めて全車があてはまる。アイ・アクティブセンスを標準装備したディーゼルエンジン車はきょう29日に発売する。
マツダは、同社の小型スポーツ多目的車(SUV)「CX―3」が2018年10月の義務化を予定する新燃費表示基準「WLTCモード」の認可を取得した。新基準は国連で定義された国際的な試験法。試験時の車両重量が増加するなど、現行のJC08モードよりも使用実態に近づけた基準になっている。現行基準よりも燃費性能が低くなる傾向にある。
マツダがWLTCモードの認可を取得したのは、今夏の発売を予定するガソリンエンジン「スカイアクティブ―G 2・0」搭載のCX―3。WLTCモードは、信号や渋滞時などの低速走行の「市街地モード」と、渋滞などの影響を受けにくい「郊外モード」、高速時の走行を想定した「高速道路モード」の燃費を表示する。また全体の平均的な数値も必要になる。
新基準を取得したCX―3(2WD)の燃費は、JC08モードでは1リットル当たり17・0キロメートルだが、WLTCモードでは同16・0キロメートルとなる。マツダは当面は両モードの基準をカタログに併記する。
商品本部主査・岡野直樹氏「中国だけにとどめておきたくない」
全く新開発の車を中国市場に投入するのは初めて。「クーペSUV」という新しいセグメントに参入した車でもあり、マツダにとっては相当な挑戦となった。
狙ったユーザー層は「ヤング・ライフスタイル・エリート」。お金も教養もあり新しい価値観を持つ人たちで、豊かになった今の中国に対して、このままでいいのかという葛藤や不安を持っている。そこにマツダから真の豊かさ、真の走る喜びを提供しようということで「エクスプローリング(探検する)・クーペ」のコンセプトで開発した。
乗用車をベースに、スリムなSUVを作るには苦労もあった。「CX―5」と比べると全高は180ミリメートル、ボンネットの高さは70ミリメートル、いずれも低い。ただ、SUVとして重要な操縦安定性を保つためにタイヤ外径や床面高さは変えていない。
このためにプラットホーム(車台)は、CX―5のものをベースとしつつもかなり手を入れている。前輪のサスペンションは新設計してボンネットの低さに対応した。車重の重さにあわせて衝突安全性を高めるためにリア部分のフロアや燃料タンクも新設計した。外板には斜めの面がかなり多く、デザイナーの手がかかっている。
結果、CX―5と比べて重心高さは50ミリメートル低く、前面投影面積は10%小さくなり、操縦安定性や燃費性能向上につながった。他社のクーペSUVで見られるようなベース車をちょっといじった作りではなく、結構手間をかけて開発したというのを知ってほしい。
長春の一汽轎車に生産委託し、一汽マツダのチャンネルで販売している。販売目標台数は言えないが出だしは好調。日本に比べると高めに設定しているCX―5よりは価格を安くして、より若い世代を狙っている。
中国国外での生産や販売をどうするかは、検討の最中。クーペSUVというジャンルへの追い風もあるし、開発者としては中国だけの販売にとどめておきたくはない。だが、中国生産の車を世界中で売るとなると、今はまだ品質面などでユーザーの抵抗がある。そこをどうするか、社内で議論している。(談)
【記者の目】
コンセプトカー「KOERU」の量産タイプだが、中国専売車はマツダのラインアップでは異例。ディーゼルエンジンが軽油の品質問題から投入できない中国で、市場の開拓者としての役割を担う。今後中国外での販売に乗り出してきた時、CX―5とのすみ分けがどうなるかも微妙。もっとはっきりしたキャラクターの違いを打ち出す必要があるだろう。
(文=広島・清水信彦)
マツダは7日、新型スポーツ多目的車「CX―5」の5日時点の累計受注台数が、1万6639台になったと発表した。同車は2月2日に発売。月間販売計画台数を2400台に設定しており、その約7倍を達成した。
商品性の高さのほか、下取り価格を高い状態で保てる売り方に取り組んだことが奏功した。「マツダの考え方に共感していただいた」(高場武一郎国内営業本部ブランド推進部主幹)と分析する。
受注構成比をグレード別に見ると、安全装備や技術を充実させたグレードが受注全体の95%を占めた。商品性の高さを顧客が認めた格好だ。
2012年の初代「CX―5」発売と同時に、マツダは値引きに頼らず、商品価値を訴求する販売手法に着手。下取り価格が以前より高く保てるようになった。新CX―5の下取り車比率を見ると、マツダ車が全体の66%と、初代より15ポイント向上。初代から乗り換えたユーザーも4割近くを占め、高場主幹は「下取り価格が高いうちに乗り換えたほうが得だと認識してもらえるようになった」とした。
小飼雅道社長は「新たな成長ステージに向けた本格スタートを、この車で切る」と意気込む。
先代は、新世代製品群のトップバッター。製品群は世界で高い評価を受け、マツダの世界販売台数は約30万台増加し、ブランドイメージの向上と、事業躍進につながった。2代目はさらなる成長の試金石で「打順は再び一番に戻った」と小飼社長。
そして今年後半には北米で初めてディーゼル車を投入、その大役に「CX―5」を選んだ。走行性能と燃費性能を両立させた上で、北米の厳しい排ガス規制に適合させている。
クリーンディーゼルエンジン「スカイアクティブ―D2・2」はノッキング音を抑える独自技術を採用し、静かで心地よいエンジン音も実現した。
一昨年、独フォルクスワーゲン(VW)がディーゼル車で排ガス試験を不正に受けていた事件が発覚。事件を受けて排ガス規制の厳格化が世界的に進む一方で、戦略上のディーゼルの位置づけが後退する動きが広がっている。
国内クリーンディーゼル市場をけん引してきたマツダ。VWの不正問題を受けて国土交通省が実施したディーゼル車の実走行試験で、マツダの車種だけ基準値を満たした。
敵失を機にマツダの独自技術が再評価された。ディーゼル開発の技術者は「VWは尊敬していただけに不正は残念だった。複
雑な心境だ」と話す。規制が最も厳しい米国市場でディーゼル車が受け入れられれば、米国でのシェア拡大に弾みがつく。
古河電気工業は複数の物体を検出できる周辺監視レーダーを開発した。マツダが2月に発売した「CX―5」向けに量産を開始した。周辺監視レーダーは先進運転支援システム(ADAS)のキーデバイス。パルス方式を採用し、物体の検知精度が向上した。
古河電工子会社の古河AS(滋賀県甲良町)が開発した。国内メーカーとして開発・量産は初めてとみられる。レーダー近傍の感度が高いため、1メートルまでの近距離の対象物を検出できる。また、70メートルまでの中距離の検出も可能。
従来の監視レーダーは「周波数変調連続波方式」を用いるのが一般的。同方式では、複数の物体がある中でトラックなど強い反射物があると他の監視対象の信号が埋もれてしまうなどの懸念があったという。
開発した周辺監視レーダーはパルス方式を採用しており、断続的にパルス波を送ることで細かく検知できる。そのため、車両や自転車、歩行者など複数の物体に対しても個別に距離や相対速度を把握できる。
周辺監視レーダーは欧州製品が大きなシェアを占めていたという。古河電工が従来とは異なる方式で高精度なレーダーを開発したことで、完成車メーカーにとって選択肢が広がる。車両バンパーなどのデザインの制約が最小限で済むといった効果も期待される。
ガソリンエンジン車は、きょう29日に予約受け付けを開始する。排気量2000ccクラスの「スカイアクティブ―G2・0」を搭載。2018年排出ガス基準の75%低減を達成した。現行より使用実態に近づけた新燃費表示基準「WLTCモード」の認可も取得した。
「アイ・アクティブセンス」では、自動ブレーキ、オートマチック車向けの誤発進抑制制御技術、車線逸脱警報システム、対向車に応じてハイビーム/ロービームに切り替えるライトシステムなどを標準装備。経済産業省などが啓発を進める「安全運転サポート車」の最高ランク、「サポカーS・ワイド」に、マツダ車で初めて全車があてはまる。アイ・アクティブセンスを標準装備したディーゼルエンジン車はきょう29日に発売する。
日刊工業新聞2017年6月29日
新燃費基準で出た数字
マツダは、同社の小型スポーツ多目的車(SUV)「CX―3」が2018年10月の義務化を予定する新燃費表示基準「WLTCモード」の認可を取得した。新基準は国連で定義された国際的な試験法。試験時の車両重量が増加するなど、現行のJC08モードよりも使用実態に近づけた基準になっている。現行基準よりも燃費性能が低くなる傾向にある。
マツダがWLTCモードの認可を取得したのは、今夏の発売を予定するガソリンエンジン「スカイアクティブ―G 2・0」搭載のCX―3。WLTCモードは、信号や渋滞時などの低速走行の「市街地モード」と、渋滞などの影響を受けにくい「郊外モード」、高速時の走行を想定した「高速道路モード」の燃費を表示する。また全体の平均的な数値も必要になる。
新基準を取得したCX―3(2WD)の燃費は、JC08モードでは1リットル当たり17・0キロメートルだが、WLTCモードでは同16・0キロメートルとなる。マツダは当面は両モードの基準をカタログに併記する。
日刊工業新聞2017年6月5日
中国専売車「CX-4」
商品本部主査・岡野直樹氏「中国だけにとどめておきたくない」
全く新開発の車を中国市場に投入するのは初めて。「クーペSUV」という新しいセグメントに参入した車でもあり、マツダにとっては相当な挑戦となった。
狙ったユーザー層は「ヤング・ライフスタイル・エリート」。お金も教養もあり新しい価値観を持つ人たちで、豊かになった今の中国に対して、このままでいいのかという葛藤や不安を持っている。そこにマツダから真の豊かさ、真の走る喜びを提供しようということで「エクスプローリング(探検する)・クーペ」のコンセプトで開発した。
乗用車をベースに、スリムなSUVを作るには苦労もあった。「CX―5」と比べると全高は180ミリメートル、ボンネットの高さは70ミリメートル、いずれも低い。ただ、SUVとして重要な操縦安定性を保つためにタイヤ外径や床面高さは変えていない。
このためにプラットホーム(車台)は、CX―5のものをベースとしつつもかなり手を入れている。前輪のサスペンションは新設計してボンネットの低さに対応した。車重の重さにあわせて衝突安全性を高めるためにリア部分のフロアや燃料タンクも新設計した。外板には斜めの面がかなり多く、デザイナーの手がかかっている。
結果、CX―5と比べて重心高さは50ミリメートル低く、前面投影面積は10%小さくなり、操縦安定性や燃費性能向上につながった。他社のクーペSUVで見られるようなベース車をちょっといじった作りではなく、結構手間をかけて開発したというのを知ってほしい。
長春の一汽轎車に生産委託し、一汽マツダのチャンネルで販売している。販売目標台数は言えないが出だしは好調。日本に比べると高めに設定しているCX―5よりは価格を安くして、より若い世代を狙っている。
中国国外での生産や販売をどうするかは、検討の最中。クーペSUVというジャンルへの追い風もあるし、開発者としては中国だけの販売にとどめておきたくはない。だが、中国生産の車を世界中で売るとなると、今はまだ品質面などでユーザーの抵抗がある。そこをどうするか、社内で議論している。(談)
【記者の目】
コンセプトカー「KOERU」の量産タイプだが、中国専売車はマツダのラインアップでは異例。ディーゼルエンジンが軽油の品質問題から投入できない中国で、市場の開拓者としての役割を担う。今後中国外での販売に乗り出してきた時、CX―5とのすみ分けがどうなるかも微妙。もっとはっきりしたキャラクターの違いを打ち出す必要があるだろう。
(文=広島・清水信彦)
日刊工業新聞2016年8月31日
「CXー5」、絶好調の滑り出し
マツダは7日、新型スポーツ多目的車「CX―5」の5日時点の累計受注台数が、1万6639台になったと発表した。同車は2月2日に発売。月間販売計画台数を2400台に設定しており、その約7倍を達成した。
商品性の高さのほか、下取り価格を高い状態で保てる売り方に取り組んだことが奏功した。「マツダの考え方に共感していただいた」(高場武一郎国内営業本部ブランド推進部主幹)と分析する。
受注構成比をグレード別に見ると、安全装備や技術を充実させたグレードが受注全体の95%を占めた。商品性の高さを顧客が認めた格好だ。
2012年の初代「CX―5」発売と同時に、マツダは値引きに頼らず、商品価値を訴求する販売手法に着手。下取り価格が以前より高く保てるようになった。新CX―5の下取り車比率を見ると、マツダ車が全体の66%と、初代より15ポイント向上。初代から乗り換えたユーザーも4割近くを占め、高場主幹は「下取り価格が高いうちに乗り換えたほうが得だと認識してもらえるようになった」とした。
小飼雅道社長は「新たな成長ステージに向けた本格スタートを、この車で切る」と意気込む。
先代は、新世代製品群のトップバッター。製品群は世界で高い評価を受け、マツダの世界販売台数は約30万台増加し、ブランドイメージの向上と、事業躍進につながった。2代目はさらなる成長の試金石で「打順は再び一番に戻った」と小飼社長。
そして今年後半には北米で初めてディーゼル車を投入、その大役に「CX―5」を選んだ。走行性能と燃費性能を両立させた上で、北米の厳しい排ガス規制に適合させている。
クリーンディーゼルエンジン「スカイアクティブ―D2・2」はノッキング音を抑える独自技術を採用し、静かで心地よいエンジン音も実現した。
一昨年、独フォルクスワーゲン(VW)がディーゼル車で排ガス試験を不正に受けていた事件が発覚。事件を受けて排ガス規制の厳格化が世界的に進む一方で、戦略上のディーゼルの位置づけが後退する動きが広がっている。
国内クリーンディーゼル市場をけん引してきたマツダ。VWの不正問題を受けて国土交通省が実施したディーゼル車の実走行試験で、マツダの車種だけ基準値を満たした。
敵失を機にマツダの独自技術が再評価された。ディーゼル開発の技術者は「VWは尊敬していただけに不正は残念だった。複
雑な心境だ」と話す。規制が最も厳しい米国市場でディーゼル車が受け入れられれば、米国でのシェア拡大に弾みがつく。
日刊工業新聞2017年3月8日記事に加筆
周辺監視レーダーはどこがすごい?
古河電気工業は複数の物体を検出できる周辺監視レーダーを開発した。マツダが2月に発売した「CX―5」向けに量産を開始した。周辺監視レーダーは先進運転支援システム(ADAS)のキーデバイス。パルス方式を採用し、物体の検知精度が向上した。
古河電工子会社の古河AS(滋賀県甲良町)が開発した。国内メーカーとして開発・量産は初めてとみられる。レーダー近傍の感度が高いため、1メートルまでの近距離の対象物を検出できる。また、70メートルまでの中距離の検出も可能。
従来の監視レーダーは「周波数変調連続波方式」を用いるのが一般的。同方式では、複数の物体がある中でトラックなど強い反射物があると他の監視対象の信号が埋もれてしまうなどの懸念があったという。
開発した周辺監視レーダーはパルス方式を採用しており、断続的にパルス波を送ることで細かく検知できる。そのため、車両や自転車、歩行者など複数の物体に対しても個別に距離や相対速度を把握できる。
周辺監視レーダーは欧州製品が大きなシェアを占めていたという。古河電工が従来とは異なる方式で高精度なレーダーを開発したことで、完成車メーカーにとって選択肢が広がる。車両バンパーなどのデザインの制約が最小限で済むといった効果も期待される。
日刊工業新聞2017年2月15日