韓国発でも日本で「定番商品」に ミシャジャパンの緻密な戦略

韓国コスメの底力 #4

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ミシャのクッションファンデーションとキャラクターとのコラボ商品

韓国コスメメーカーでは珍しく日本法人を置き、日本独自の商品展開やマーケティングを行っているミシャジャパン。近年では低価格で品質の高いクッションファンデーション(※1)が年齢を問わず人気だという。日本法人設立から14年目を迎える同社は、昨今の韓国ブームをどう見るのか。(取材・昆梓紗)

日本独自戦略への転換

MISSA(ミシャ)は2000年設立。「当時通貨危機の影響で物価が上昇していた韓国にあって、低価格で高品質な化粧品を幅広い消費者に届けることを理念とし展開しました」(ミシャジャパンの車基榮社長)。
 日本進出は2006年で、同業他社に先駆けて日本法人を設立、名古屋に直営店をオープンした。当時の日本は韓国ドラマのヒットにより“韓流ブーム”に沸いており、韓国と同様の商品展開を行うことにした。そのうち「BBクリーム」など売れ筋商品が次第に固定化してきたことから、売れている商品を卸販売するように方針転換した。
 しかしバラエティショップやドラッグストアなどでの取り扱いが増えるに従い、日本法人から販売しているものと韓国からの平行輸入品との差別がつきにくくなってしまった。そこで品質を守るためにも日本で販売商品をコントロールすることが必要だと判断し、日本独自の商品展開へと方向転換していった。
「次第に韓国と日本の消費者では仕上がりの肌質や色などの微妙な感覚の違いがあることに気づき、ここ2、3年は完全に日本向けのみの商品開発を行っています」(マーケティング本部マネージャーの上條槙氏)。韓国コスメの技術やトレンドに日本人の嗜好や興味を加えているのが、ミシャジャパンの強みになっていった。

クッションファンデのヒット

その“強み”が最大限活かされたのが、2015年に発売した「クッションファンデーション」。韓国でクッションファンデーションは2010年から発売されておりすでに人気商品となっていたが、日本ではあまり知られていなかった。そこに目をつけ先手を打って投入、1年半で500万個を売り上げる大ヒットとなった。

 しかし韓国で人気だからといってそのまま日本に持って来ても売れるわけではない。クッションファンデーションをはじめて目にする消費者も多く、どういったものか理解されにくいというのが一番の課題だった。
 そこでまずこだわったのはパッケージのPR文言だ。「商品を見た時にパウダーファンデーションと勘違いする方も多かったので、『タッチ』という文言を入れ、従来とは違う使い方だということが分かるようにしました」(上條氏)。
 また手を汚さずにメイクができることから「いつでもどこでも」、仕上がりイメージを表す「水光肌」(※1)という言葉を入れた。店舗での接客にも力を入れ、販売員に使い方を広めてもらうよう研修した。「日本のお客さんにきちんと愛される製品を狙って作り込んでいきました」(車社長)。

口コミの力

しかし何より宣伝効果が高かったのは消費者の「口コミ」だ。発売から半年で人気に火が付き、拡散されていった。
 1000円程度という手に取りやすい価格設定が「試しに使ってみよう」という消費行動につながり、口コミが拡散された大きな要因の1つである。はじめは流行に敏感な10代~20代が多かったが、次第に顧客層が広がっていった。販路拡大に伴い、スーパーやドラッグストアなどでも手に取れることも後押しした。「先日は70代の方から感謝の手紙をいただきました」(上條氏)。
 始めは「ツヤ」タイプのみだったが、口コミや消費者ニーズに応える形でバリエーションを増やし、現在は仕上がりの異なる3種類が発売されている。
 さらにキャラクターとのコラボレーションを積極的に行うことで、従来はリーチしづらかった層の獲得にもつながったという。例えば不二家の「ミルキー」とコラボレーションした際は、中の色もミルキー色(白)にして限定発売した。若者だけでなくミルキーやペコちゃんを懐かしむ上の世代も買ってくれたという。

 また、ベースメイクだけでなく、ターゲットや商品を絞ったポイントメイクも投入している。その一環として10月にアイシャドウを発売。韓国で人気のアイシャドウを日本向けに色のバリエーションを変えて商品化したものだ。多色の粉やラメを手作業で練りこんでいるため、まったく同じ配色の商品はないという。

近年、日本に韓国コスメブランドが多数上陸していることについて車社長は、「中国での伸びが鈍化していることや、日本市場で商品の“力試し”をし、強みや人気を盤石なものにしたいという考えがあるのでは」と分析する。
 しかし成熟した日本市場での戦いは厳しい。幅広い消費者を掴もうとすると、日本独自の商品設計が必要になる部分が出てくる。同社のクッションファンデーションも「匂いが気になる」という声が上がることがあるという。
 「現在日本では3回目の韓国ブームが来ていると思いますが、いつかはフェードアウトすると考えています。弊社ではブームに頼らず、日本市場での定番商品を目指し商品開発やブランディングを続けていきます」(車社長)。

車社長(左)、上條氏
(※1)クッションにリキッドファンデーションが染み込ませてあり、パフに取って塗る。手を汚さず、時間短縮になる
(※2)韓国では「ムルガン肌」として一般的。水に濡れたようなツヤを表現する。

連載・韓国コスメの底力(全4回)

 世界で注目を集める韓国コスメ。日本でも若者を中心にブームが起きている。その背景と底力に迫る。
【01】アイスタイル(11月15日公開)
【02】ロフト・ルミネ(11月18日公開予定)
【03】韓国の化粧品業界(11月21日公開)
【04】ミシャジャパン(11月25日公開)

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COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

日韓関係がニュースで取り沙汰されている昨今ですが、韓国コスメの取材を通して関係悪化を感じることはなく、消費者たちは普通に化粧品を購入し、口コミをして紹介しあい、次々と新商品がリリースされていました。 ただ市場が先行して商品を投入するというより、SNSや口コミで商品を紹介しあい、日本未発売の商品の場合、それに追随する形で日本での発売が決まる、という現象が起きていました。国や政治の関係悪化を超え、文化を自由に取り入れ楽しむ若者たちのキラキラした姿は逞しくもありました。

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