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カメラの付加価値とは何か、追求を続けるニコンの現在地
【拡大版】連載・局面打開へ挑むカメラ各社#06 ニコン常務執行役員・御給伸好氏
ニコンは2019年度の販売台数について、レンズ交換式カメラは前期比約22%減、交換レンズが同18%減と、いずれも市場全体の縮小幅以上に厳しい見通しを立てている。18年に投入した35ミリメートルフルサイズミラーレス「Zマウントシステム」をはじめ、高付加価値製品の開発や販売戦略を御給(ごきゅう)伸好常務執行役員に聞いた。(聞き手・国広伽奈子)
―Zマウントシステムの反響は。
「Zマウントを採用した『Z6』はキャッシュバックの効果もあり人気。『同7』は17年に発表した一眼レフの人気機種で同価格帯の『D850』と比較されることが多く、ユーザーの期待に応えきれていない。反省点を新製品開発に生かして機能の追求を続けたい」
―Zマウントシステムの今後について。
「開発スピードを上げていく。プラットフォーム(基盤)化も、新製品を出すリードタイムの短縮に向けた取り組みだ。ラインアップはユーザーの要望も踏まえながら(性能や価格面でZ6、同7の)上下に広げる。交換レンズもそろえなければならない」
―ニコンが提供できる付加価値とは何ですか。
「例えば、18年に発売した焦点距離500ミリメートルの一眼レフ用レンズは、重量や長さの大幅な削減が人気につながった。小型化・軽量化はこれからのトレンド。他社にはない、特徴的な小型の望遠レンズは今後も重要だろう」
―今後の開発体制について。
「19年度はZマウントシステムの完成を急ぐため、設備や研究・開発への投資額はこれまでと同規模を保つ。交換レンズの種類の充実や、将来を見据えた仕込みも欠かせない。センサーやエンジンなどは今日、明日の話で用意できるものではない。中期経営計画は3年後、ロードマップは5年後を想定していることが多いが、さらにその先を見据えて動いている」
―販売戦略のポイントを教えて下さい。
「価格対応のスピード不足が課題だったが、要望に応じて柔軟に対応できるように見直した。また、メーカー視点から顧客の体験価値の重視へと方針を切り替えている。中国・アジアを中心に、いい静止画・映像が撮れる“成功体験”を共有できる仕掛け作りも重要だ」
―仕掛け作りで気をつけていることは。
「少しでも写真に親しんでもらえるように、イベントの開催場所を工夫したり会員制交流サイト(SNS)などを活用したりしている。性能を語るばかりではカメラの魅力は伝わらない。最近の取り組みでは、ウェブマガジンの『NICO STOP(ニコストップ)』やプロ野球チームと組んだ撮影イベントが若者や女性に好評だ。イベントには開発者や設計者も出席させて、製品開発へ反映できるように励んでいる」
―製品開発について、今後の懸念材料はありますか。
「カメラは多くの部品で構成されている。市場が小さくなることで部品調達が難しくなるリスクが直近の懸念だ。市場の大きさは別として、趣味性の高い工業製品として現在の形のカメラは残るだろう。だが、ゲームチェンジの可能性が今後ないというわけでもない」
―生産自動化について。
「交換レンズ生産の自動化は簡単ではないが、人工知能(AI)で職人技を管理・数値化できればコストは下がる。調整工程などは、人による作業をいかになくせるかがカギだ。一方で、価格では判断されない、付加価値を持った製品づくりは欠かせない。これからも“ニコンクオリティー”を守り、品質と機能を追求し続ける」
【01】キヤノン(9月17日公開)
【02】ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(9月18日公開)
【03】パナソニックアプライアンス社(9月19日公開)
【04】オリンパス(9月20日公開)
【05】富士フイルム(9月21日公開)
【06】ニコン(9月22日公開)
―Zマウントシステムの反響は。
「Zマウントを採用した『Z6』はキャッシュバックの効果もあり人気。『同7』は17年に発表した一眼レフの人気機種で同価格帯の『D850』と比較されることが多く、ユーザーの期待に応えきれていない。反省点を新製品開発に生かして機能の追求を続けたい」
―Zマウントシステムの今後について。
「開発スピードを上げていく。プラットフォーム(基盤)化も、新製品を出すリードタイムの短縮に向けた取り組みだ。ラインアップはユーザーの要望も踏まえながら(性能や価格面でZ6、同7の)上下に広げる。交換レンズもそろえなければならない」
―ニコンが提供できる付加価値とは何ですか。
「例えば、18年に発売した焦点距離500ミリメートルの一眼レフ用レンズは、重量や長さの大幅な削減が人気につながった。小型化・軽量化はこれからのトレンド。他社にはない、特徴的な小型の望遠レンズは今後も重要だろう」
―今後の開発体制について。
「19年度はZマウントシステムの完成を急ぐため、設備や研究・開発への投資額はこれまでと同規模を保つ。交換レンズの種類の充実や、将来を見据えた仕込みも欠かせない。センサーやエンジンなどは今日、明日の話で用意できるものではない。中期経営計画は3年後、ロードマップは5年後を想定していることが多いが、さらにその先を見据えて動いている」
―販売戦略のポイントを教えて下さい。
「価格対応のスピード不足が課題だったが、要望に応じて柔軟に対応できるように見直した。また、メーカー視点から顧客の体験価値の重視へと方針を切り替えている。中国・アジアを中心に、いい静止画・映像が撮れる“成功体験”を共有できる仕掛け作りも重要だ」
―仕掛け作りで気をつけていることは。
「少しでも写真に親しんでもらえるように、イベントの開催場所を工夫したり会員制交流サイト(SNS)などを活用したりしている。性能を語るばかりではカメラの魅力は伝わらない。最近の取り組みでは、ウェブマガジンの『NICO STOP(ニコストップ)』やプロ野球チームと組んだ撮影イベントが若者や女性に好評だ。イベントには開発者や設計者も出席させて、製品開発へ反映できるように励んでいる」
―製品開発について、今後の懸念材料はありますか。
「カメラは多くの部品で構成されている。市場が小さくなることで部品調達が難しくなるリスクが直近の懸念だ。市場の大きさは別として、趣味性の高い工業製品として現在の形のカメラは残るだろう。だが、ゲームチェンジの可能性が今後ないというわけでもない」
―生産自動化について。
「交換レンズ生産の自動化は簡単ではないが、人工知能(AI)で職人技を管理・数値化できればコストは下がる。調整工程などは、人による作業をいかになくせるかがカギだ。一方で、価格では判断されない、付加価値を持った製品づくりは欠かせない。これからも“ニコンクオリティー”を守り、品質と機能を追求し続ける」
連載・局面打開へ挑むカメラ各社(全6回)
【01】キヤノン(9月17日公開)
【02】ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(9月18日公開)
【03】パナソニックアプライアンス社(9月19日公開)
【04】オリンパス(9月20日公開)
【05】富士フイルム(9月21日公開)
【06】ニコン(9月22日公開)
日刊工業新聞2019年9月13日に加筆・修正
特集・連載情報
デジタルカメラ市場の縮小が続いている。ミラーレスカメラだけは販売が伸びているが、スマートフォンの普及によるカメラ離れの影響は大きく、ミラーレス新製品の投入だけで市場を回復させるのは難しい。カメラ各社はどのような戦略を立てているのか、カメラ事業トップに聞く。