成長のミラーレス市場狙う、ソニーが作りたいレンズたち
【拡大版】連載・局面打開へ挑むカメラ各社#02 ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ シニアゼネラルマネジャー・長田康行氏

―18年後半から各社がフルサイズミラーレスを投入しています。
「フルサイズミラーレス市場はもともと成長領域だったが、参入企業の増加もあり前年から大きく伸びた。デジタルカメラ市場全体は縮小しているが、付加価値の高い領域は拡大している」
―一眼レフからの移行に期待が持てます。
「移行が加速すればミラーレス市場はまだ盛り上がるだろう。ハイエンド層の増加はレンズの購入の増加にもつながる。最近は高付加価値で高価格のミラーレス用レンズの投入が増えている。あと3年はこの流れが続くのではないか」
―ソニーのミラーレス用レンズの本数は60本に近づいています。
「作りたいレンズがまだ何十本もある。ターゲットを的確に絞り、ユーザー拡大につなげたい。7月発売の焦点距離200ミリ―600ミリメートルの超望遠レンズは、特に鳥や動物、飛行機を撮影する人たちから想定以上の反響があった。初領域の製品で、ユーザー層が広がる感覚を強く感じた。材料費の高騰は懸念しているが、製品の小型・軽量化のために妥協はしない」
―フルサイズとAPS―Cの両規格で共通のレンズを使える「1マウント戦略」の成果はどうですか。
「サブ機の需要は意外と大きい。子どもとレンズを共有して撮影を楽しむために、カメラ本体を追加購入するケースもある。プロでも初心者でも、静止画も動画も楽しめる製品が揃い、ユーザーがいろいろな製品を楽しめることに価値はある」
―カメラ・レンズシステム全体はどのように拡充しますか。
「現時点でカメラのラインアップは圧倒的に多い。(既存の製品群の)外に新たに設けるよりは、今ある領域を横に広げることになるだろう。周辺機器も充実させてシステムの魅力を高めたい」
―研究開発費について。
「特に交換レンズは、加工に求められる精度や材料の質が上がっている。設計が難しくなり、時間や工数がかかると必要な費用は増える。試作段階でシミュレーションを活用しながら効率よく作る工夫を続けていく」
―スマートフォン利用者の取り込みが共通課題に挙がっています。
「スマホユーザーも写真をたくさん撮っている。その中の1%でも『カメラを持ちたい』と考えるようになればマーケットは倍になるのではないか。暗い環境への対応や画角、焦点距離などがスマホの限界点としてよく挙げられるが、つまりは撮影に対する『もっと遠く』『もっと広く』という欲求がユーザーの中にあるということだ」
―高級価格帯のコンパクトデジカメや超小型カメラの製品の需要は。
「高級コンデジは需要が大きく減っているわけでもなく、地域によってはむしろ伸びている製品もある。また、4月に発売したデジタルスチルカメラ『RX0』のような、スマホが使えない環境で使える製品もニーズはある。撮影でスマホのバッテリーを消耗したくない、というのもカメラを持つ理由になるようだ。そこは、スマホで音楽が聴けるようになってもニーズがある『ウォークマン』に近いかもしれない」
―自社製品との連携について。
「撮影機材は業務用からコンパクトまで揃えており、テレビやスクリーンなどの鑑賞機材、マイクや音響機器、スマホなども持っている。複数製品が組み合わさったサービスや新製品など、やれそうなことはいろいろあるだろう」

連載・局面打開へ挑むカメラ各社(全6回)
【01】キヤノン(9月17日公開)
【02】ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(9月18日公開)
【03】パナソニックアプライアンス社(9月19日公開)
【04】オリンパス(9月20日公開)
【05】富士フイルム(9月21日公開)
【06】ニコン(9月22日公開)
日刊工業新聞2019年8月9日の記事に加筆
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