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成長のミラーレス市場狙う、ソニーが作りたいレンズたち

【拡大版】連載・局面打開へ挑むカメラ各社#02 ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ シニアゼネラルマネジャー・長田康行氏
 世界初の35ミリメートルフルサイズミラーレスカメラを2013年に発売したソニー。豊富な製品群を抱える先駆者は、今後の市場でどう戦うのか。製品開発の指揮を執るソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズデジタルイメージング本部の長田康行シニアゼネラルマネジャーに聞いた。(聞き手・国広伽奈子)

―18年後半から各社がフルサイズミラーレスを投入しています。
 「フルサイズミラーレス市場はもともと成長領域だったが、参入企業の増加もあり前年から大きく伸びた。デジタルカメラ市場全体は縮小しているが、付加価値の高い領域は拡大している」

―一眼レフからの移行に期待が持てます。
 「移行が加速すればミラーレス市場はまだ盛り上がるだろう。ハイエンド層の増加はレンズの購入の増加にもつながる。最近は高付加価値で高価格のミラーレス用レンズの投入が増えている。あと3年はこの流れが続くのではないか」

―ソニーのミラーレス用レンズの本数は60本に近づいています。
 「作りたいレンズがまだ何十本もある。ターゲットを的確に絞り、ユーザー拡大につなげたい。7月発売の焦点距離200ミリ―600ミリメートルの超望遠レンズは、特に鳥や動物、飛行機を撮影する人たちから想定以上の反響があった。初領域の製品で、ユーザー層が広がる感覚を強く感じた。材料費の高騰は懸念しているが、製品の小型・軽量化のために妥協はしない」

―フルサイズとAPS―Cの両規格で共通のレンズを使える「1マウント戦略」の成果はどうですか。
 「サブ機の需要は意外と大きい。子どもとレンズを共有して撮影を楽しむために、カメラ本体を追加購入するケースもある。プロでも初心者でも、静止画も動画も楽しめる製品が揃い、ユーザーがいろいろな製品を楽しめることに価値はある」

―カメラ・レンズシステム全体はどのように拡充しますか。
 「現時点でカメラのラインアップは圧倒的に多い。(既存の製品群の)外に新たに設けるよりは、今ある領域を横に広げることになるだろう。周辺機器も充実させてシステムの魅力を高めたい」

―研究開発費について。
 「特に交換レンズは、加工に求められる精度や材料の質が上がっている。設計が難しくなり、時間や工数がかかると必要な費用は増える。試作段階でシミュレーションを活用しながら効率よく作る工夫を続けていく」

―スマートフォン利用者の取り込みが共通課題に挙がっています。
 「スマホユーザーも写真をたくさん撮っている。その中の1%でも『カメラを持ちたい』と考えるようになればマーケットは倍になるのではないか。暗い環境への対応や画角、焦点距離などがスマホの限界点としてよく挙げられるが、つまりは撮影に対する『もっと遠く』『もっと広く』という欲求がユーザーの中にあるということだ」

―高級価格帯のコンパクトデジカメや超小型カメラの製品の需要は。
 「高級コンデジは需要が大きく減っているわけでもなく、地域によってはむしろ伸びている製品もある。また、4月に発売したデジタルスチルカメラ『RX0』のような、スマホが使えない環境で使える製品もニーズはある。撮影でスマホのバッテリーを消耗したくない、というのもカメラを持つ理由になるようだ。そこは、スマホで音楽が聴けるようになってもニーズがある『ウォークマン』に近いかもしれない」

―自社製品との連携について。
 「撮影機材は業務用からコンパクトまで揃えており、テレビやスクリーンなどの鑑賞機材、マイクや音響機器、スマホなども持っている。複数製品が組み合わさったサービスや新製品など、やれそうなことはいろいろあるだろう」
ソニーの「α6600」


連載・局面打開へ挑むカメラ各社(全6回)


【01】キヤノン(9月17日公開)
【02】ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(9月18日公開)
【03】パナソニックアプライアンス社(9月19日公開)
【04】オリンパス(9月20日公開)
【05】富士フイルム(9月21日公開)
【06】ニコン(9月22日公開)
日刊工業新聞2019年8月9日の記事に加筆
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ソニーのカメラ部門は、テレビやスマートフォンなどの部門と4月に統合している。自社製品との連携で「シナジーが出せることは多分にある」(長田シニアゼネラルマネジャー)。ミラーレスやレンズの豊富なラインアップに手応えを感じているところに、こうした製品群が合流する。ソニーのカメラ戦略は他の領域にも影響を及ぼすはずだ。

特集・連載情報

局面打開へ挑むカメラ各社
局面打開へ挑むカメラ各社
デジタルカメラ市場の縮小が続いている。ミラーレスカメラだけは販売が伸びているが、スマートフォンの普及によるカメラ離れの影響は大きく、ミラーレス新製品の投入だけで市場を回復させるのは難しい。カメラ各社はどのような戦略を立てているのか、カメラ事業トップに聞く。

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