お金を積めば介入できる…歪むユーザーレビューの信頼性どう作る?

連載・シェアリングサービス ユーザーレビュー神話はどこへ(1)

 個人と個人が取引するシェアリングサービスが広がり、改めて信頼(トラスト)が注目されている。シェアリングサービスはユーザー同士のレビューが信頼の柱の一つになってきた。だがユーザーレビューはお金を積めば介入できる指標になっている。ユーザーレビューの歪みが科学的に証明されるとサービスへの信頼が揺らぎかねない。そこで新しいトラストを作る試みが産学官で進んでいる。(文=小寺貴之)

国際標準化狙う


 「ユーザーレビューに代わる評価やトラストは昔の血筋や学歴、現代のお金に相当するくらいの価値尺度になるだろう」と産業技術総合研究所の持丸正明人間拡張研究センター長は予想する。シェアリングエコノミーの国際標準化の議論がISOの技術委員会で始まった。議長には持丸センター長が就いた。

 この技術委員会は日本の提案で設立された。日本ではシェアリングサービス事業者が守るべきガイドラインを、内閣官房IT総合戦略室が策定し、シェアリングエコノミー協会(東京都千代田区)が認証システムとして運用している。

海外展開後押し


 シェアエコ協会の二宮秀彰氏は「日本の考え方が国際的に認められれば、認証事業者が海外展開しやすくなる」と期待する。

 まずはシェアリングエコノミーの用語定義と理念原則を検討する作業部会が始まる。日本としては用語定義とガイドライン策定の検討を並行して進めたかったが、実際に議論すると各国のもつイメージが大きく異なっていた。用語定義を合意せずにガイドラインを作ると、理念とガイドラインが合致しなくなる可能性がある。そこで用語定義を先行させ、続いてガイドラインの作業部会を走らせる。

 持丸センター長は「最終的にはこれが近道だと信じている」と話す。早ければ2020年春頃にガイドライン標準の新規提案に移れる。「21年春頃にはガイドライン標準の投票に移り、事実上、標準案が世界に示されるだろう」と説明する。順調に進めば国際標準として発行されるのは22年になる。

国内外で議論


 シェアエコ協会の認証ではユーザーレビューが操作できるものでは意味がなく信頼性の高い評価を保つ仕組みを求める。ISOではユーザーレビューをシェアエコの技術委員会で扱うのか、オンラインレピュテーションなどの別委員会で扱うかは未定だ。その上で持丸センター長は「レビューの信頼性は非常に大きなトピックになる」と強調する。国内と国際の両方でシェアリングのトラストを作る議論が進む。

連載・シェアリングサービス ユーザーレビュー神話はどこへ(全5回)


【01】歪むユーザーレビュー、信頼性どう作る?(2019年7月29日配信)
【02】クラウドソーシングが値崩れ起こす二つの要因(7月30日配信)
【03】不正ユーザーレビューに入った科学者たちのメス(7月31日配信)
【04】単発バイトマッチングアプリが実現したい社会(8月1日配信)
【05】理系学生のスキルシェアが示す新たな仲介モデル(8月2日配信)

日刊工業新聞2019年7月22日

小寺 貴之

小寺 貴之
07月29日
この記事のファシリテーター

 ISOの議論は米国と中国が特に熱心で、議論をかき回すわけではなく、協力的に議論が白熱したそうです。反面、日本のガイドラインをそのまま通す訳にはいかなそうです。最初の日本の思惑からは少し外れて、丁寧にガイドラインを作ることになります。ISOで作成するのはサービスの国際標準であり、拘束力のある決まり事ができるわけではありません。持丸先生は「規制の網ではなく、合意の傘」と表現します。シェアリングサービス事業者が大切にすべき原則やガイドラインがまとめられ、各国の政府や企業が具体的な運用方法を創っていくことになります。用語定義やガイドライン作りに時間をかけすぎると、産業の変化について行けなくなるという認識を、各国も持っているため、最短コースでまとめることになります。議長の持丸先生やシェアエコ協会、JISの方々にはハードな3年間になると思います。

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