ニュースイッチ

AD

目指すは“うずら業界”日本一!人気プリンに学ぶ農業の6次産業化

【連載#03 北海道胆振地方の有望企業】
目指すは“うずら業界”日本一!人気プリンに学ぶ農業の6次産業化

ヒット商品のプリン。牛乳など北海道産の食材が使われている

*<室蘭うずら園>
 うずらの卵を使ったプリンが全国的な人気を呼んでいる室蘭うずら園。農業の6次産業化でモデルケースになりうる企業だ。北海道で唯一のうずら卵生産農場であるとともに、今では売り上げの4割をスイーツ部門が占めるほどに成長している。

 百貨店のお中元、お歳暮商品として、プリンとカステラのセットが人気だ。富裕層向けにやや高めの価格設定だが、それに見合う材料と味を提供する。うずらの卵はもともと栄養価が高い。エサに魚粉を多く含むので、ビタミン、ミネラル、タンパク質などが豊富。欠点だった臭みも、世界的に有名なアイスクリーム企業が使う卵と鶏のエサを研究して克服した。「良いものは安易に安売りしてはならない」(三浦忠雄社長)が持論で、顧客のターゲットを絞り、オンリーワンの商品を開発、さらには安全と味を担保する高品質商品を製造し、適正価格で販売していく。

 三浦社長はホクレン勤務時代に食品衛生管理「HACCP」を担当し、全国の食品工場を検査していた。その過程で菌の勉強をするなか、鶏のサルモネラ菌汚染は種の移動、すなわち他所から鶏を仕入れるため発生することを学んだ。そこでホクレン定年後、一切ヒナを購入しておらず、薬も使っていない同うずら園を知人と共同購入。2010年(平22)には社長に就任して経営にあたった。

 当初はエサや灯油の値上がりなどで経費がかさみ、苦しい経営が続いた。反転攻勢に転じたのはプリンの成功が大きい。材料を吟味、レシピを研究し、全国で開催される北海道物産展に出展。消費者、バイヤーの意見を取り入れながら、5年を費やして商品開発した。

 現在はうずら10万羽を飼育、プリンは年間30万個生産している。「6次化最大のハードルは流通」(同)とし、ホクレン時代の経験を役立てつつ、年間140回を重ねる物産展出展を通じたマーケティング重視の姿勢は、今後も続けていく考えだ。

 胆振東部地震は年2回行う孵化作業の1週間後だった。「停電が孵化に影響しなかったのは不幸中の幸い」(同)と胸をなでおろしている。生き物であるうずらを扱うだけに、単純な事業拡大には走れない。ゆえに付加価値を高めるため、一層のブランド力向上を課題に掲げる。「そのための近道は、うずら業界で日本一になること」(同)と意気盛んだ。
三浦忠雄社長

所在地=北海道室蘭市石川町282-5、社長=三浦忠雄氏、設立=1982年(昭57)、資本金=5000万円、社員数=25人

室蘭うずら園公式ページ

<電気工事西川組>


電気系統の故障を事前に検知するシステムを開発

道民の防災意識向上を電気で支える


 昨年(2018年)9月、台風21号は日本各地に多大な被害をもたらしながら4日深夜から5日朝にかけて北海道に上陸。大きな揺れに襲われたのは、その復旧作業のさ中である6日早朝だった。

 電気工事西川組は地震直後から、緊急電源の設置や電気設備保守点検など、被害地域の工場、公的機関からの応援要請に応えられるよう待機していた。しかし思ったほど連絡がない。それは各地、各部署で防災への取り組みが進んでいたからで、「自分たちで地元を守るという前向きな意識が高まっている表れだろう」と、西川正志会長は感心した表情で話す。

 ただ防災への備えがすでに十分ということではない。台風、地震、そしてブラックアウトの経験は、道民、市民のリスク管理に対する意識向上を一層促した。西川良雄社長は「新たに病院などで発電機設置を予定するなど、各施設で設備を整備する動きがある。電気インフラに携わる企業として適切な提案、お手伝いをしていきたい」という。

 同社は電気工事、電気通信工事、そして電気保安管理が主力。官公庁をはじめ、王子製紙苫小牧工場やJX金属苫小牧ケミカルの構内にも事務所を置くなど、民間企業の業務も数多く請け負っている。特に電気保安管理では年を追うごとに必要な技術が増えているため、市からの補助金を得て訓練用の設備を導入し、若手の研修およびマニュアル作成を進めている。「電気使用量が適切になるよう精度を上げる仕事、電気を止めない仕事」(西川会長)を心がけているからだ。

 また地域貢献として苫小牧発明研究会の事務局を置いて主導している。市内の異業種企業が会員になり、それぞれの業務における改善案をヒントにした新製品、新技術の創造を目指している。これまでに特許技術や文部科学大臣表彰も数々得てきた。他に研修会の実施や、子供たちにモノづくりの楽しさを体験してもらう活動も行っている。

 前会長の西川辰美氏が創設に尽力した。同社でも非常灯など自社製品を開発し、販売した実績を持つ。このほど電気系統における電圧、温度の変化などをセンサーで随時測定し、故障の前に検知するシステムを開発。実用新案を取得した。電気回路の不具合で工場などの操業に影響がないようにするとともに、人の安全にも配慮したものになっている。
西川正志会長(左)と西川良雄社長

所在地=北海道苫小牧市矢代町2丁目10番13号、社長=西川良雄氏、設立=1965年(昭40)、資本金=4500万円、社員数=45人

電気工事西川組公式ページ


連載「北海道胆振地方の有望企業」これまでの記事はこちら

【連載#01】北海道胆振地方の有望企業

【連載#02】北海道胆振地方の有望企業

【連載#03】北海道胆振地方の有望企業

【連載#04】北海道胆振地方の有望企業

【連載#05】北海道胆振地方の有望企業

【連載#06】北海道胆振地方の有望企業

【連載#07】北海道胆振地方の有望企業
sponsored by 中小企業庁

編集部のおすすめ