台風や地震にも負けない!倒木再生に挑む北海道・胆振の老舗企業

【連載#01 北海道胆振地方の有望企業】

<イワクラ>


 創業106年を迎える苫小牧市の老舗企業、イワクラは造林から木材加工、再利用までを一貫して手掛ける。森の再生や木材の有効活用、そして猛威を振るう自然災害からの復興が深刻さを増すなか、総合木材業としての同社の存在感が増している。

 主力製品であるパーティクルボード製造販売やツーバイフォー住宅などの林材、建材、住宅、そして環境を加えた各事業を4本柱に展開。そのうち環境事業部は後藤英夫会長が部長を兼任し、新たな技術、製品開発を模索する。

 2016年(平28)の夏、史上初めて3つの台風が北海道に上陸。その際に発生した流木、倒木の再生活用に携わった。この経験を生かし、胆振東部地震の震源に近い厚真町の復興事業に取り組んでいる。

 同町は広大な地域で山林の地すべりが起こり、膨大な樹木が流されてしまった。その木を幹だけでなく、処理が厄介な枝葉まで丸ごと引き受ける。そして製材などに回し、建築資材や燃料として活用できるよう管理を行っている。

 日本製紙と王子製紙、そしてイワクラがそれぞれ中心となって3グループを形成して北海道と協定を結び、復旧工事が終了するまで続ける計画だ。「ボランティアではなく事業として行う。当然黒字も出している」(高橋賢孝取締役環境事業部長代行)という。

 一方で木質バイオマス分野でも地域のけん引役だ。木質ペレット、木質チップを製造し、ストーブを持つ小中学校の一部やバイオマス発電所に燃料として納入している。その際に発生する焼却灰について「灰まで使えればゼロ・エミッションが完成する」(同)とし、灰の再利用に乗り出した。それが地域未来牽引企業として取り組む第一の課題に掲げた、フォーミング抑制剤の製造販売だ。

 この抑制剤は、製鉄炉で工程中に発生するスラグ発泡を抑えるため必須なもの。比重が1以上で燃え尽きることが条件になるので、製紙工場から出るペーパースラッジを主原料にする場合が多い。

 ところがペーパースラッジも手に入りにくい状況にあるため、木の焼却灰に近隣の工場で出るコーヒーかすを混ぜて抑制剤を製造して安定供給を図る。新日鉄住金室蘭製鐵所に年間6000トン程度の納入を想定し、約1億円の売り上げを見込む。

所在地=北海道苫小牧市晴海町23番地1、社長=岡本泰雄氏、設立=1913年(大2)、資本金=2億円、社員数=165人


イワクラ公式ページ

<アイスジャパン>


宇宙や再生医療にも広がる「温度管理」のプロ


 「中小企業に欠けているのは中長期的ビジョンを持たないところだ」。アイスジャパン(室蘭市)の松岡正昭社長はこう考える。同社は保冷剤の製造販売で国内トップシェアを誇るが、常にその先、さらに先を見据えて布石を打ち続けている。

 創業時は製氷業で、室蘭市内の飲食店などに氷を納めていた。しかしながら、製氷機を備えた店舗が増えるにつれ危機感を覚え、保冷剤製造へ転換。徐々に販路は拡大するが、それもいつしか頭打ちになったことで技術革新に乗り出す。

 成分の配合を調節することにより、摂氏0度だけだった温度領域をマイナス50度からプラス50度まで拡大。低温から高温まで一定の温度を長く保つことが可能になった。現在はさらに温域を広げ、多様なニーズ応えられる保冷・蓄熱剤の市場投入によって一気に全国区の企業へと成長した。

 こうした技術はJAXAの国際宇宙ステーション実験棟「きぼう」、さらに物資補給機「こうのとり」の保冷カプセルでも実績を上げている。2―6度の温度帯を10日間保てる同社の製品が採用され、宇宙空間における実験で得られた貴重な検体を、無事に宇宙から地球へ持ち帰ることができた。

 コア技術を生かして他分野への参入も図る計画だ。そのひとつが医療分野。医薬品は工場から病院、薬局への流通過程で、輸送時に劣化しないよう厳密な品質管理の必要がある。

 これを医薬品の適正流通基準(GDP)といい、厚生労働省も今年に入りGDPガイドラインを導入した。特にiPS細胞など再生医療分野で温度保持管理は重要で蓄熱材の役割は大きい。「再生医療は世界で15兆円の市場性が見込まれる。その一部でチャンスをつかみたい(松岡社長)という。

 カタログ通販で昨年販売した「室蘭ひゃっこい枕マット」は、初回製造分が完売するヒット商品になった。常温使用でひんやり感を長時間保てることから、冷え過ぎを嫌う高齢者に好評だった。

 しかし現状に安住はしない。製氷業が衰退したように、好調な保冷剤に頼るだけではいずれ同じ道をたどる。「寝るまで頭の中は仕事のことばかり。疲れるが考えれば知恵が生まれる」(同)と、後継者へバトンをつなぐまで時代の変化に対応した成長を目指す。

所在地=北海道室蘭市中島町4丁目9番28号、社長=松岡 正昭氏、設立=1981年(昭56)、資本金=5600万円、社員数=60人


アイスジャパン公式ページ
湯たんぽの代替製品「湯たロン」と松岡社長



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【連載#01】北海道胆振地方の有望企業

【連載#02】北海道胆振地方の有望企業

【連載#03】北海道胆振地方の有望企業

【連載#04】北海道胆振地方の有望企業

【連載#05】北海道胆振地方の有望企業

【連載#06】北海道胆振地方の有望企業

【連載#07】北海道胆振地方の有望企業


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