日立は人事で会社を変える!やりたい仕事に“立候補する”文化を

日立製作所代表執行役専務CHRO・中畑英信氏

 ビジネスや労働市場の変化を受け、社員の能力を均一に引き上げる従来の人材戦略を見直す企業が増えてきた。日本最大級のグループを形成する日立製作所は、若手幹部の育成やグローバル共通の人事制度や施策を導入し、変革を急ぐ。中畑英信代表執行役専務に、今後の日立の経営リーダーや人材像について聞いた。

社長を50代前半に


 -幹部の若返りを図っています。
 「世の中の変化の速さを考えると、これからの社長は50代前半がいい。また当社の幹部候補人材の中で、同じ事業部長クラスの外国人は日本人より5歳以上若い。そこで2年前に若手50人に集中した強化策を追加した。意図的に早く経験を積ませて育成する。4―5年内に日本人管理職の最も若い層を5歳以上若返らせる。35歳で課長、40歳で部長、45歳で事業部長が目標だ」

 -足元で若返りは進んでいますか。
 「日立アプライアンスの徳永俊昭社長は2017年に50歳で就任した。1-2年内には、日立本体の執行役や主要グループ会社の社長に40代で就任する人が出てくる」

 -日立製作所本体に外国人の社長が就任する可能性は。
 「あり得るが、越えなければいけない壁もある。ただ、主要グループ会社はすでに外国人トップが就任した。4月にはアリステア・ドーマー執行役専務が本社の副社長に就く。日立で働く外国人社員には、大きなインパクトがある。また、幹部育成プログラムには、外国人も日本人も同じ基準で入っている」

人財データ基盤で社員の意識変革


 -2017年度から導入した米ワークデイの人財マネジメント統合基盤は、人材管理を効率化できます。
 「それだけではない。最終的に自分でキャリアを考え、つくるように個人の意識を変えたい。このシステムは自分でスキルや経験、やりたいことを入力し、おさらいできる。他の社員が閲覧し、プロジェクトに声がかかれば自信が付く。そして、挑戦したいポジションに必要なスキルを知り、経験を積めば、そこに立候補できるようになる。将来は手を挙げなければ、異動しないようにしたい」

 -日立だけでなく、これまで多くの日本企業は“マス”として全社員のレベルを引き上げてきました。
 「強い製品があれば世界の競争に勝てていた時代は、工場文化の中で技術者全体を育成する方法が正しかった。今は、製品だけでは勝てない時代だ。多様な製品を組み合わせ、社会課題を解決するには、社員が自分の意思を持って個々の能力を伸ばす必要がある。ただ、日本企業全てが同じではなく、どんな事業や地域で戦うかによって人材戦略も異なる」

 -意識変革の達成目標はありますか。
 「全従業員の意識を変えるには時間がかかる。ただ、若手幹部がどんどん出てくると、多くの意識が変わるきっかけになる」

日本に“手を挙げる”モチベーションを


 -今後の人事制度・施策の強化策は。
 「システム共通化が完了し、グローバル企業と同じ土俵に上った。次はこれを使い、意識や文化を変える。海外ではデータを使って管理職にアドバイスを送る企業もあり、参考にしていく。優秀な人材を獲得する最良の手段は事業で勝つこと。良い外国人の人材が入ってきた時、グローバル共通の人事施策は絶対に必要だ。国籍に関係なく、チャンスを示せる」

 -中西宏明経団連会長が就職活動のルール廃止を提案し、日本の産業界に一石を投じました。
 「IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)を活用したソサエティー5・0の実現に向けて変わらなければ、世界経済の中で日本が沈む危機感がある。その時、皆一律で、受け身の感覚で入社していていいのか。新卒採用だけではなく、全てが関係する。日本全体が手を挙げるモチベーションにならならければいけない」


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日刊工業新聞2019年2月26日掲載より加筆

梶原 洵子

梶原 洵子
02月26日
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今、日本を代表する大手企業が相次ぎ、新たな人材戦略を打ち出しています。トヨタ自動車は1月に役員体制をスリム化し、柔軟な人材登用をしやすくしました。パナソニックは退社した人材の再採用を積極化しています。日本の資源は突き詰めれば人材しかいません。今後の社会の変化を活用し、企業の成長をけん引できる人材が求められています。

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