日立・中西会長インタビュー「常に壊していかないとダメなんだ」

 2009年の巨額赤字を受け社会インフラ事業へ経営資源を集中した日立製作所。今では「コネクテッドインダストリーズ(ソサエティ5・0)」をけん引する代表企業だ。会長の中西宏明氏は日立の経営改革をリードする一方で、最近は政府の政策に対し民間の立場から積極的に提言している。日本の産業革命と世界の潮流をどう捉えているのか。自らの経験を元に、日本企業が向き合うべき課題などについて語ってもらった。

 ーいきなりライバル会社の話題からですみません。製造業の中でもコマツは建設機械を遠隔監視する「コムトラックス」で、モノを売った後のサービスで稼いでいます。日立よりコマツは約10年早く経営危機があって、逆にそれで思い切ってかじを切れたとの見方もできます。
 「日立はこれまで徹底して製造業を貫いてきて、工場のオペレーションについては相当訓練されているんですね。多くの失敗をバネに改善していくことに長けた人は数多くいる。でも、これからはその延長線だけじゃ全然ダメなわけだ。お客さんがこう考えているから、自分たちの事業もこう変えていこうというのは、それこそ経営層が決定すべきことですよ。その意味でコマツの坂根(正弘元社長)さんのリーダーシップは大きいと思いますよ」

 「工場ではなく、お客さんに近い営業の前線がプロフィットセンターにならないといけない。この原材料はいくらで買って製造コストはこれだけだから、いくらもうかります、というモデルでは、もう通用しない。自分たちのソリューションを提供することで、お客さんの売り上げが増え、どのくらいコストを下げられるから、得られたプロフィットを『7対3』とか『6対4』でシェアしましょうという発想・説明をしなければいけない。顧客体験をどう創るかが競争軸です」

お客さんと一緒に市場をクリエイション


 ー坂根さんはコマツにしか創れない“断トツ”サービスという言い方をしています。日立はここ数年、IoTにフォーカスしていますが、日立にしかない顧客体験はありますか?
 「コマツは建機という領域に絞ってコネクテッドな世界を作り付加価値を広げていきましたね。我々の持っている事業領域は広範囲なため、ビジネスのやり方が異なる。まず、業種や国・地域が違うと、求められるニーズも変わってくる。分かりやすい例でいえば鉄道。日本の鉄道事業者は、運行管理やデジタル化を事業者自身で手がけているが、海外の鉄道事業者からは、そういった企画・管理・運営も含めて『全部やってほしい』という要望を受ける。日立は、日本の鉄道事業者と一緒になって鉄道システムを作り上げてきた経験やノウハウがあるので、その経験を生かし、海外地域でも花開こうとしている」

 「でも日立が本当にやりたいのは、さらにその先を行く市場のクリエイションです。どういうことかというと、新興国では、鉄道の駅を降りてから、次の交通手段に誘導するようなトランスポーテーションの総合サービスを、お客さんと一緒になって発見し、定義し、展開していかないと市場の成長に結びつかない。だからお客さんに対する見方もアカウント(個別企業)だけではダメで、パイプライン(営業プロセス全体)で見なきゃいけない。そういうことができる人材を社内で数多く育てる必要があって、そのステージに上がるところでうちも手間取っていますよ」
<次のページ、柳井さんや似鳥さんに刺激>

日刊工業新聞2017年10月4日

明 豊

明 豊
10月02日
この記事のファシリテーター

6月に「METI Journal」で公開した中西さんのインタビューを全文掲載します。

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古川 英光
古川 英光
10月03日
GEのCEOを退任されたジェフ・イメルトさんと主張はほぼ同じですね。私もこの手の考え方は好きです。
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「デジタライゼーションもロボティクスもAI(人工知能)もツールであって、それらのツールを有効的に社会課題の解決に使いましょうというのが政府が掲げる『ソサエティ5・0』というコンセプト。…日本は先進国でも発展途上国でも、一緒に課題を解決することができるパートナーになれる大きな可能性を持っている」
  

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