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SAPが日本型イノベーションで仕掛ける“3P”

SAPジャパン・福田譲社長に聞く「江戸時代でいえば出島」
SAPが日本型イノベーションで仕掛ける“3P”

SAPジャパン公式ページより

 ―景況感をどうみていますか。
 「SAPグループ全体でみても、日本の売上高の伸びは極めて高い。日本のお客さまが本当の意味でのグローバル化やデジタル化で競争力を高めようと、投資に踏み出した結果だ。ここ1年間では小売りや電力など非製造業の伸びが大きく、これまで7割程度を占めていた製造業の割合が2018年に初めて半分を割った」

 ―今後の重点課題は。
 「グローバルで言われているデジタル変革の方法論と、自分たちの実践を通じて、日本企業が意図してイノベーションを起こすにはどうすべきかが見えてきた。19年は日本型のデジタル変革への取り組みを本格化する年だ」

 ―日本型とは。
 「ピープル(人々)、プレイス(場所)、プロセス(やり方)と、三つのPを推奨している。いまを支えるビジネスと、将来の飯の種は食い合いになるのが常。新しい事業は本社など本丸でやると、未来の種がつぶされてしまう。場所を変え、新しい空気を吸って、今までと違った人たちと接する。江戸時代でいえば出島だ。やり方としてはデザイン思考を勧めている」

 ―具体的にはどう取り組みますか。
 「物理的な仕掛けとして、東京・大手町にインキュベーション(起業支援)センター『インスパイアード・ラボ』を作った。同じビル内に当社の製品群を体感できる『レオナルドセンター』も開設する。インスパイアード・ラボは三菱地所との共同運営となり、SAPのロゴは一切ない。ただ、そこで練ったアイデアを当社を含めて一緒に実現する場合、レオナルドセンター側で引き継ぎ、共同でイノベーションを実践する」

 ―日本発のイノベーションは世界展開できるのでしょうか。
 「当社の製品・サービスを通して、数多くの基幹システムがつながっている。スタートアップ企業は自社アプリケーション(応用ソフト)をレオナルドを媒介としてクラウド上にアップすれば世界展開が可能だ。当社はビジネス界の『iTunes』(米アップルのアプリ提供サイト)だ」
福田譲氏 

【記者の目】
 インスパイアード・ラボは2月に大々的に披露する。レオナルドセンターは4―6月に開設する。同じビルにはフィンテック(ITと金融の融合)拠点があり、さらにトヨタ自動車の自動運転の開発チームなども入居する予定。この地の利を生かし、SAPが二つのショーケースをどう活用するかが見所だ。
(日刊工業新聞・斉藤実)

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