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SAPがサッカードイツ代表で見せつけたデータ分析、次はコーチや医療スタッフにも

どうするニッポン!欧州チームを皮切りにアイスホッケーなど他のスポーツに展開
SAPがサッカードイツ代表で見せつけたデータ分析、次はコーチや医療スタッフにも

クラウド型HANAを採用したマッチインサイト

 独SAPはソフトウエア「HANA」のプラットフォーム上では初となるスポーツ専用クラウドソリューションを今夏に提供する。チームと選手のパフォーマンスを最適化するための分析機能や、それを効率的に管理するための統合基盤を構築する。今回のクラウドサービスはサッカーと欧州市場を主な対象とし、今後はアイスホッケーなど他のスポーツにもサービスを拡大する。

 同サービスは選手を管理するマネージャーやコーチ、医療スタッフなどが利用する。機能はチーム管理、トレーニング計画、選手の健康管理、パフォーマンス分析で構成。選手のけがや薬物治療、パフォーマンス診断を分析して、各選手から最高のプレーを引き出せるように健康状態を把握する。
 マスターデータ(基礎情報)の機能を活用して簡単に管理ができ、今後はどの端末でも利用しやすいコミュニケーション基盤を実現する。
(日刊工業新聞2015年05月12日 電機・電子部品・情報・通信面)

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 SAPジャパン(東京都千代田区)は、スポーツでデジタルデータの分析・活用の提案を本格的に始めた。馬場渉バイスプレジデントは「スポーツ関連での目標数値は決めていないが、きちんとした事業に育てたい。スポーツ産業に貢献できることを徹底的にやろうというスタンスだ」と意欲的だ。

 スポーツ市場向けにデータを瞬時に分析できるソフトウエア「HANA」を軸としたデータ活用の提案を三つのカテゴリーに分けて行う。特に需要を見込んでいるのが、試合への集客を促すなどスポーツに関わるビジネスの支援や、チームを強くするためのビッグデータ(大量データ)活用だ。試合やスポーツイベントと周辺産業を組み合わせ、より顧客満足度を上げるための活用、さらにその試合やイベントを安全に運営するための活用を提案する。そのほか練習時や試合中の選手の動きをデータとして蓄積・分析して指導に役立てる。

 国内での第1弾としてデータスタジアム(東京都世田谷区)の新サービスの開発を支援する。データスタジアムは新サービスで、過去のプレーデータと進行中のプレーデータを組み合わせ、リアルタイムな予測分析の実現を目指している。

 この開発基盤としてクラウド型HANAを採用した。プロ野球チームやプロサッカーチームの選手のパフォーマンス向上や、テレビ中継など試合を楽しむためのツールとして提供する予定だ。
 独SAPは既に英国のレーシングチームやドイツのプロサッカーチームなどでデータ分析を活用した支援を行っている。サッカーワールドカップ・ブラジル大会で優勝したドイツ代表チームの選手のレベル向上を目的としたソリューションを開発し提供している。

 データは試合中は「トラッキングカメラ」という特殊なカメラから、練習中は選手が付けているセンサーから取得する。このデータにHANAで過去のデータと組み合わせて分析する。分析結果は独自開発した「マッチインサイト」というシステムでタブレット端末(携帯型情報端末)により確認できる。

 こうした海外での事例を参考にしながら、国内の展開を進める。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて各種目のナショナルチームの選手育成の支援も視野に入れている。また「ビジネスの戦略をスポーツに例えることが多い」(馬場バイスプレジデント)としてスポーツでのノウハウを製造業や流通業など他産業にも役立てたい考えだ。

 
日刊工業新聞2014年08月12日 電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
昨年のサッカーワールドカップ・ブラジル大会で優勝したドイツ代表はチーム強化のためにビッグデータを積極的に導入していた。2006年の自国開催でベスト4に終わったことを受け、SAPが最新のサッカー分析システムを開発し、全面サポートした。1試合で約4000万件のデータを収集し分析、効果はてきめんだった。06年には選手1人当たりのボール保有時間は平均2・8秒だったが、2014は1秒を切るまでになったそうだ。人とボールが組織的に連動する高速パスサッカーの戦術は頭一つ抜けていた。SAPはドイツが国家プロジェクトとして推進する「インダストリー4・0(第4次製造業革命)」の中核企業。製造業でも日本もうかうかしてられない。

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