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ヤマトの荷物“止めない”多頻度輸送、労働環境の改善につながるか

「施設を生かし、物流革命を起こす」(山内社長)
ヤマトの荷物“止めない”多頻度輸送、労働環境の改善につながるか

仕分け処理能力の高い「関西ゲートウェイ」

 ヤマトホールディングス(HD)は大阪府茨木市に総合物流ターミナル「関西ゲートウェイ(GW)」を完成し、11月から運用を始めた。稼働を機に、東名阪のトラックによる幹線輸送は、夜間集中から昼夜を問わない多頻度運行に“進化”した。速達性の向上に加え、長距離トラック運転手の負担を軽減する効果も見込める。

 ヤマトHDは2013年に次世代の物流網「バリューネットワーキング構想」を打ち出した。流通加工による付加価値創出とターミナル間をつなぐスピード輸送の両輪からなる“止めない物流”がコンセプトだ。

 関西GWの完成により、全荷物量の5割が経由する東名阪の幹線で、構想実現の基盤は整った。

 従来の幹線輸送は各地の拠点(ベース)で集荷した1日分の荷物を、方面ごとにトラックを仕立て、夕方以降に出発していた。今後は、日中からベースに荷物が集まり次第、近隣のGWに運び込む。

例えば、厚木GW(神奈川県愛川町)では北陸や九州、関西といった“西行き”荷物を1台のトラックに混載して中部GW(愛知県豊田市)に運ぶ。

 中部GWに到着した九州や関西など、さらに“西行き”の荷物は中部GWで集めた“西行き”荷物とともに、再びトラックに混載されて関西GWに向かう。

 山内雅喜社長は「施設を生かし、物流革命を起こす」と話す。高速の仕分け能力を持つGWが、多頻度幹線輸送を支え、主要都市間の当日輸送も可能としている。幹線を活用した流通在庫の一元化といったビジネスモデルの創出も見据える。

 長距離トラックは片道に1日かかり、目的地で1泊を要する“3日運行”と呼ばれる勤務形態が主流だ。目的地までの距離が短縮されて、終日のピストン輸送に変われば、毎日の勤務終了後は自宅に帰れるようになる。顧客サービスの向上と労働環境の改善は相反するものばかりではない。
(文=小林広幸)
日刊工業新聞2017年12月27日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
今年はEC市場の急速な拡大で、存立の前提である宅配サービスで歪みが顕在化した1年だった。最大手のヤマト運輸では荷物量の拡大に、人員の確保など処理能力が追いつかず、現場が悲鳴を上げた。労働環境改善が“待ったなし”となり、ビジネスモデルを転換。アマゾンジャパンをはじめとする大口顧客1100社との契約運賃見直し、配達時間帯の再編や再配達対応時間の短縮などのサービス縮小、27年ぶりの基本運賃引き上げに至った。将来の労働力不足や顧客ニーズの多様化は業界各社共通の問題であり、佐川急便、日本郵便も料金改定に追随。再配達問題への消費者の理解が進んだことで、宅配ボックスや宅配ロッカーの普及が始ろうとしている。しかし国土交通省の2016年の資料によると、日本のトラックドライバーのうち50歳以上が全体の35%を占める。中高年層への依存度が高く、人手不足が今後より深刻化するのは確実で、個社の企業努力も必要だが、社会全体「物流」のイノベーションを急ぐ必要がある。

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