値上げだけでは解決しない! “高齢化するニッポン物流"の深刻度

日本のトラックドライバーのうち50歳以上が全体の35%

 物流のサービスと価格をいかに維持するか―。業界を超え、社会全体で考える時に来ている。

 宅配最大手のヤマトホールディングス(HD)は、過去2年間の「未払い残業代」の一時金として、4万7000人の従業員に合計190億円を支払う。これに伴い、2017年3月期の営業利益を580億円から340億円に下方修正した。宅配事業者間の熾烈(しれつ)な荷物獲得競争の中、社員に過酷な業務を課したツケが、業績にも及んだ格好だ。

 ヤマトHDの役員の一人は「顧客には値上げなど言いにくかった」と打ち明ける。同社は物流拠点から家庭までのラストワンマイルの配送を効率化できるよう、年内に基幹システムを更新する計画だ。山内雅喜社長は「人口密集地帯や山間部など、どんなエリアでも使える仕組みにして全国展開し、効率化したい」と話す。

 国土交通省の2016年の資料によると、日本のトラックドライバーのうち50歳以上が全体の35%を占める。中高年層への依存度が高く、今後の人手不足が深刻化するのは確実だ。

 一方で小口輸送(0・1トン未満の貨物)量は急増している。国際競争の激化やネット通販の拡大によって、90年の800万件から、2010年には1800万件に膨らんだ。

 こうした状況を受けて国は、モーダルシフト、荷主や地域を巻き込んだ地域内配送の共同化、輸送機能と保管機能が連携した輸送網集約を推進。企業の取り組みも始まった。

 福山通運は5月に専用の貨物列車を名古屋貨物ターミナル(名古屋市中川区)―福岡貨物ターミナル(福岡市東区)間に新設する。福山通運の専用列車は3本目で、東海から九州への乗り入れは初めて。幹線輸送をトラックから鉄道に切り替え、トラックドライバーの深夜労働の削減をはじめ、就労環境の改善などにつなげる。

 佐川急便はアマゾンの配送から撤退したのを契機に徐々に宅配便の荷物を減らし、企業間物流にシフトしている。ラストワンマイルの効率化が難しく、利益が見込めないためだ。

 人口減少が進み、ネット通販などで荷物量が増えれば、消費者に大きなコスト負担を求めず、物流サービスを維持するのは困難だ。モーダルシフトなどによる業界連携と、IoT(モノのインターネット)など最新技術の導入、宅配ロッカーの設置などが、物流網の維持には欠かせない。国と業界、顧客を巻き込み、競争から協調に向けた取り組みが必要となる。
(文=高屋優理)

日刊工業新聞2017年4月25日

明 豊

明 豊
04月26日
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ヤマトは秋にも実施する個人客向けの基本運賃の値上げ率は5ー20%程度になりそうだ。荷主からは大幅なコスト増を警戒する声も強い。他社も値上げに追随する可能性もあるが、個社の企業努力も必要だが、社会全体「物流」のイノベーションを急ぐ必要がある。

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