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循環が富を生む、サーキュラーエコノミーで経済効果595兆円!? 

欧州で加速。日本でも続々とモデル生まれる

志布志市(鹿児島県)、紙おむつから再生パルプ


 鹿児島県志布志市で16年末から、紙おむつのパルプを再生する実証事業が展開されている。協力する家庭から使用済み紙おむつを回収し、地域のリサイクルセンターに運んで専用機で分解。取り出した紙パルプをオゾンで殺菌する。

 リサイクル技術を開発したユニ・チャームによるとパルプは無菌となり、木材から作った新品パルプより上質になる。同社は再生パルプの紙おむつへの循環利用を目指している。

 新聞やコピー用紙は古紙回収され、紙製品に再生されている。一方で紙おむつは焼却処分がほとんど。高齢化社会に突入し、福祉施設を抱える自治体では紙おむつの廃棄量が増加している。

 こうした問題に加え、志布志市はさらに深刻な課題を抱えていた。同市は焼却施設を持たないため資源化できないゴミは埋め立て処分している。紙おむつの廃棄が増えると埋め立て場が満杯になる時期が早まってしまう。その課題解決のためにユニ・チャームとの実証を始めた。

 市はリサイクル技術の導入で紙おむつの廃棄を減らせる。さらに再生パルプを同社に販売して、地域に新しいリサイクル産業が育つ。

 ユニ・チャームにもメリットがある。再生コストは、新品パルプの製造費よりも安く、パルプの循環利用を実現できると紙おむつの原料費を抑えられる。さらに森林資源の使用を減らし、パルプ製造に投入するエネルギーも削減して環境負荷も低減できる。CSR本部の宮沢清参与は「みんながハッピーになる」と期待する。

 廃棄物を資源に変え、循環させて富を生む。市は数年の実証を続け、紙おむつリサイクルの実用化を判断する。
使用済み紙おむつから再生したパルプ
**土浦市(茨城県)、市内の生ゴミを堆肥に

 茨城県土浦市もゴミ処理で課題を抱えていた。市の焼却施設が老朽化して更新が迫っていたが、立て替えとなると大きな予算が必要となる。延命して行政負担を抑えようと、日立セメント(日立市)と協力した。

 同社は土浦市内に産業系食品廃棄物の処理施設を持つ。この施設で15年度から市の家庭生ゴミの受け入れを始めた。市の焼却施設は生ゴミの焼却がなくなった分、炉への負荷が減って延命化できた。

 同社は生ゴミを発酵させて堆肥にする。いまは無償で配っているが、将来は有料で販売する。焼却をやめたことで生ゴミが堆肥として売り物になり、行政負担を抑えられる。小さな資源循環が地域に富をもたらす。
土浦市は日立セメントと協力して、家庭生ゴミを処理施設で堆肥化する


ティービーエム、飲食店の廃棄物で発電


 ティービーエム(TBM、埼玉県所沢市)は飲食店の廃棄物に着目し、発電事業を始めた環境ベンチャーだ。飲食店の排水には調理で使った油脂が含まれる。油脂だけ回収しても、水分が多く未利用資源となっていた。飲食店は業者に処理費を払って油脂を処分している。

 TBMは油脂から水分を除去し、燃えやすいように改質する技術を確立。飲食店から油脂を引き取り、燃料化して発電する事業を始めた。

 飲食店はTBMに油脂を買い取ってもらえるので処理費を削減できる。さらに油脂回収による水質保全、油脂の廃棄削減と環境にも貢献。化石燃料ではないので発電時の二酸化炭素(CO2)排出抑制にも役立つ。佐原邦宏社長は「まさに三方よし」と胸を張る。

 いま発電所は埼玉県嵐山町にあり、東京都内や埼玉県内のファストフード店などから集めた油脂で発電している。「いずれは回収した地域ごとに発電所を造りたい」(佐原社長)としている。
飲食店の排水から回収した油脂を燃料化し発電する
2017年10月9日 日刊工業新聞
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
日刊工業新聞で4月から連載してきたサーキュラーエコノミーの最終回として掲載しました。紹介済みの話題もありますが、地域貢献などの切り口でまとめ直してみたつもりです。補助金や環境貢献だけでなく、経済原理でリサイクルを回すモデルが日本で生まれていると思います。わかりやすいのが、地域課題と結びついた例。欧州式のICT、IoTも加わると、新しいリサイクルモデルが日本でも加速されるのではないでしょうか。

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